冥王星にさよなら

□王とて、ひとの子
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アラジンを救った女性は、痛いくらいに真っ直ぐで生真面目であった。傷が癒えるまでゆっくりしていってくれ、と言えばよのはは、申し訳なそうに頭を下げ俺の役に立てる時が来たら全力で力を使うと告げた。
アラジンを救ったではないかと言えば、それは当然のことだと言いきった。
真面目だな、とただただそう思った。
朝昼晩と、よのはの傷の手当てをする時ジャーファルが晩の担当になった。
最初は、直接会いに行かれない俺の代わりとして彼女の傷の具合の報告といった形であった。しかし、日に日にジャーファルの様子が変化した。彼女を語る口調が、優しいものへとなっていった。

「随分と親しくなったようだな」

「そういうつもりは、ありませんが。ただ、構ってやりたくなってしまいます」

それを親しくなったと言うのだ、とは言葉にせずに呑み込んだ。
アラジン達の会話からも、よのはの名前をよく聞くようになった。
急によのはに会いたくなり、ジャーファルに何も言わずに会いに行こうと心に決めた。
元気な姿を早く見たい、と思いながら。笑顔を見たい、と思いながら。



**



クスクス。クスクスクス。
隣を歩くジャーファルの笑い声に居たたまれなさを感じ、声を掛ける。

「いつまで、笑っているんだ」

「すいません、だって彼女が、」

そう言い更に笑い出したジャーファルに何も言えなくなってしまった。
よのはに会いに行ったはいいがとても警戒されていた為、楽にしてくれて構わないと告げれば彼女は頭を捻らせた。それを見兼ねて、ジャーファルが助け舟を出せば思いもよらない返事が返ってきた。

─えっ、無理です

拒絶されているわけではない。ただ、シンドバッドの王と云う地位に恐縮しているだけ。わかってはいるが、他の者との接し方に心が痛む。

「よのはは、あれで精一杯ですからね」

「わかっているさ」

「アナタに落ちない人なんて、久しぶりですね」

「別に口説いているわけはない」

だが、女性の扱いに悩んだこと今までなかった故に難しい。

「毎日、会いにいけば馴れるだろうか」

「ハァ?」

「…無論、仕事を片付けてから」

「やめてあげて下さいよ。治るものを治らなくなってしまいます」

では、どうしたらいいと頭を捻らせているとジャーファルがポロッと溢す。

「執務のこともそのくらい真剣に考えてくれると嬉しいんですが」

聞こえないフリを決め込んで、よのはと普通に会話が出来る方法を考える。

「別に嫌われているわけではないのだし、いいのでは」

「たがなぁ、」

ジャーファルやアラジン達との差があまりに激しい。
それを目の当たりにすると、胸にくるものがある。

「王とて、人の子ですね」

ジャーファルが告げる。
そうなのだ。王とて、人の子のだ。
よのはと親しくなりたいと思い、何がいけないと云うのだ。



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