冥王星にさよなら

□こどものたいおん
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身体をグッと伸ばして、着替えをする。今日着るのは、パジャマ代わりに着ている服ではなくジャーファルさんが用意してくれたワンピースだ。
今日からリハビリの開始だった。寝たきりでは以前のように長距離を歩けなくなると思い、そろそろ身体をならしたいと告げるとジャーファルさんは無理はいけませんよ、と言い城内を散歩するよう提案してくれた。
ワンピースは、ヤムライハさんと云う方が昔着ていたモノらしい。会えたら是非お礼を言いたい。

「あっれ?」

散歩に出たわいいが、15分程歩いて早速迷子になってしまった。ジャーファルさんが念を押して「道に迷ったら、城内の誰かに聞くんですよ」と言っていた意味がわかった。話を聞いていた時は、私はそんなに子どもではないですよと言いたくなったが、関係なかった。これは、誰だって迷う。
人がいないか周りを見渡せば、誰も近くにはいなかった。どうしようかなと思い頭を掻いた。

「参ったな」

「どうかしたんですか」

「わっ!」

背後から急に声がし、後ろを振り向けばそこにいたのはモルジアナちゃんだった。

「モルジアナちゃん、ビックリしたよ」

「すいません、それでどうかしたんですか」

「ま、迷子になりまして」

モルジアナちゃんは目を少し見開いた後、「送ります」と言った。

「えっ、いいよ。いいよ。戻り方だけ、教えてくれたら」

だが、モルジアナちゃんは一歩も引かず「送ります」と告げる。この子は一度決めたら貫き通すタイプの子だなと思い、お願いすると微かに笑った気がした。

「はい」

朱色の髪が揺れた。



**



「御免ね」

「大丈夫です」

そう告げモルジアナちゃんの後に続いて歩く。歩幅は差ほど変わらない。

「傷は大丈夫ですか」

「うん。大丈夫だよ。今日は、身体をならす為に歩いてたの」

「そうですか。それは良かったです」

ホッと安堵するモルジアナちゃんを見て、とても嬉しくなってまった。

「モルジアナちゃんは、優しいね」

「そんなことはないです」

そう否定するのも、モルジアナちゃんの良さである。
モルジアナちゃんは、一生懸命で働き者で、思いやりがあって、気配りが出来る。そして何より、可愛い。
モルジアナちゃんは、数年後とても素敵な女性になると容易に想像出来た。

「モルジアナちゃん、ちょっと待ってて」

彼女にそう告げ中庭の花が咲いている所に行き、何輪か花を摘む。身体に負担を掛けないように、小さく走りモルジアナちゃんの元へ戻った。

「どうかしたんですか」

「お礼がしたくて。ちょっとごめんね」

摘んできた花を一束に纏めて、かんざしのようにモルジアナちゃんの髪に挿した。

「うん。可愛い」

「ありがとうございます?」

状況が呑み込めてないモルジアナちゃんは、頭を捻らせる。

「アリババくんとアラジンくんに会ってくるといいよ」

「はい」

部屋まで送り届けてもらい、モルジアナちゃんと別れて1時間後。
モルジアナちゃんに連れられて、アリババくんとアラジンくんがやって来た。何故か、3人頭に花を挿して。お揃いだね、と私が言うと3人は嬉しそうに笑った。
胸の奥が温かくなった。



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