冥王星にさよなら
□かすかないわかん
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涙を拭いながら、よのはは申し訳なさそうに告げた。
「いろいろと、本当にありがとうございます」
「いや、いいんだ」
よのはが笑って生きることを自分は望んだのだから。困ったように、ふにゃりとよのはが笑った。
「あと、手を放していただけると」
「ああ、すまない」
手を放せば、よのはは大切そうに左手を右手で包んだ。そんな仕草に何とも言えない気持ちになった。
「シンドバッドさん、あの、私と約束をしたのは左手を確かめる為ですか」
よのはの言わずとしていることがわかり、否定の言葉を口にする。
「いや、約束はただ純粋によのはと知っていることを話したかったからだ」
「よかった」
嬉しそうによのはが笑う。出来れば、その笑顔でずっといて欲しかった。
「これからシンドリアの民として、シンドバッドさんに、」
「よのは?」
言葉を急に止め、よのはは急に困惑し出した。どうしよう、どうしたらいいと顔に出ていた。
「よのは、どうかしたのか」
だが、よのはは応えない。きっと、言いにくいことなのだろう。このような時のよのはは、大概言いにくいことを考えている。手にとるようによのはの気持ちが、わかった。
「大丈夫だ、」
するとよのはは、恐る恐る告げた。
「民としてシンドバッドさんに尽くしていきます。でも、やくそくをしてしまいました」
「やくそく…」
その言葉が、何か引っ掛かる。
「はい。アリババくんが、いつか王になったとき。アリババくんの国の民になると、」
申し訳ありません。
よのはがそう口にする。それが、何に対する謝罪なのか理解が出来ず微かに苛立つ。よのはに枷をつけている自分と、つけてないアリババくん。どちらをよのはが選んだとしても、自分はアリババくんに負けているのだ。
悶々とする。
だが、何より今はよのはの気持ちを楽にしてやりたかった。
「2つの国の民になってもいいんじゃないのか」
「ですが」
それでは、忠誠的な示しがつかないと云うことだろう。確かにそうだ。
「王である、オレが言うんだ。それで、いいじゃないか」
そう、それでいい。よのははもっと楽に物事を考えてもいい。
「いいんですか?」
「ああ」
「どちらの民になっても、王を思う想いは変わりませんからね」
力みながら言うよのはに、わかっているよと告げれば「はい」と頷く。
これで、よかった。
そうは思っているものの、拭い切れない思いがあるのは確かだった。