冥王星にさよなら
□おだやかなる日々
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「シンドバッドさん」
弾んだ声にそう呼ばれ振り替えればよのはが、此方に向かってパタパタと走って来た。
多くの書類を大事そうに抱え、少し乱れた呼吸を調えながら口を開いた。
「ちょうどよかったです。今、執務室に行こうとしていたところで」
「ジャーファルからか」
「はい」
よのはが抱えている書類を受け取り、パラパラと捲りながら内容を確かめる。
「確かに、受け取った」
「はい」
嬉しそうに返事をし、それではと頭を下げ戻ろうするよのはは付け加えるように言葉を告げた。
「お仕事、頑張って下さいね」
満面の笑みで告げるものだから、頑張るしかないなと頭を掻いた。ジャーファルは、わかっていてよのはに書類を届けさせているじゃないのかと思いながら。
相変わらず、執務室に籠る日々である。まだまだ国は、平和とは言い切ることは出来ない。
だが、今日と云う日を笑って過ごし、無事に明日を迎えられている。
問題はまだまだ山積みだが、この現状を維持出来たらと思う。
風が吹く。
よのはは、この国の風を優しいと言った。だが、シンドバッドには相変わらず、ただの風であった。
**
よのはが、シンドリアにいることを決意し2週間が過ぎた。よのはは、この国にいることを決意しまず、仕事や住む場所はどうしようかと頭を捻らせた。
シンドバッドは、一瞬何を言っているんだと思ってしまった。よのはには、このままこの城に住み、何かしら仕事を与えるつもりだった。
よのはにそう告げれば、今にも泣きそうな顔をしながら「ありがとうございます」と告げた。最初は断れるかと思っていたが、よのはは生きる辛さを知っていた。そこは、甘んじて受け入れてくれたようだった。
よのはがどのくらいシンドリアにいるかは、わかりはしないがずっとこの城にいるつもりはないんだろうなぁ、と感じた。
仕事は何を与えようと考えたが、よのはは一通りのことは出来るタイプだった。凄いなと誉めれば、生きてく為ですから、と何でもないように告げた。
それが妙に心に引っ掛かった。何故かは知らないが何かが引っ掛かった。
「よのはは、何がしたい」
出来ればよのはの意思を尊重したかった。そう問えば、よのはは一瞬考えた素振りを見せながら、何でもないように口を開く。
「やはり、シンドバッドさんのお役立てる仕事がしたいです」
難しいですよね、とそんな顔をよのははしていた。
嬉しいことを言ってくれる。
そして考えた結果、ジャーファルの補佐として雑務を任せることにした。ジャーファルは大層喜んだ。これで、仕事が楽になると。
確かに、仕事が回るようになった。何より、休憩をしなかったジャーファルが3時のおやつと称して、よのはと休憩するようになった。シンドバッド自身も、執務をサボりがちであったがよのはが持ってきた書類は何故だかやらねばと思ってしまい、仕事を溜めなくなった。
よのはは変わらず、一生懸命だった。
代わり映えのない日々が、ずっと続けばいいと願った。