冥王星にさよなら

□からめた、こゆび
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今日も身体をならす為に、城内を散歩していた。ここ数日で、迷子にはならなくなる程に。
だが、今日は調子に乗って歩き過ぎてしまった。自室に戻る前に、気分が悪くなり階段に座りながら休憩をしていた。
ふんわり。風が吹く。
この国は、風が優しく吹く。風すらも王に似るのかなと、あり得ないことを考えながら、1人笑った。

「よのはさん?」

呼ばれる声の方へ顔を向ければ、そこにいたのはアリババくんだった。私が顔を向けると、彼の顔は急に強張りこちら走ってやって来た。

「アリババくん、どうしたの」

「顔、真っ青じゃないですかっ!」

焦るようにアリババくんが告げる。気分が悪くはなったが、顔が真っ青になるほどだとは気がつかなかった。けれど、アリババくんが焦るほど体調が悪いわけではない。少し休憩したら大丈夫だよ、と告げるとアリババくんは私の隣に腰を降ろした。

「心配なんで部屋まで送ります」

「いいって、大丈夫だよ」

「オレが大丈夫じゃないんです」

何だか、アリババくんの押しが強く断るに断れなくなってしまった。少し休憩をしてから戻るつもりだ、と告げればアリババくんは突然のように付き合ってくれた。

「アリババくんは、優しいね」

「俺なんか、アイツに比べれば」

と頭を掻いた。
それから、アリババくんとアラジンくんの出会い。モルジアナちゃんとの出会いを聞かせて貰った。話を聞いているうちに、アリババくんが「王子」であることを知った。敬意を払わなくてごめんね、と言えばそう云うの苦手なんでいいですと言い二人で笑った。



**



「でも、そっか王子なのか」

「そんな改めて言わなくても」

沁々と告げれば、アリババくんは何処か呆れたように告げた。けれど、アリババくんが「王」か。きっと、素敵な王になるなと思った。
アリババくんの作る国は、きっと優しい国だろうと一人思い描いた。

「ねぇ、アリババくん。いつか、アリババくんが国の王になったらさ。私もアリババくんの国の民になっていい?」

アリババくんは、目を見開いて私を見た。

「故郷はないんですか」

「うん、故郷も家族もいないよ」

嘘は言っていない。この世界に私の家族はいないし、故郷もない。何より、アリババくんの民になりたいと思うのは、帰ることを諦めたのではない。自分の生まれた場所に帰りたいとは思う。けれど、あの言葉の意味を考えるのなら私は死ぬまでこの世界にいることになるのだ。

─全てを見届けよ、

これは、希望だ。やるせない自分の生きる先に、少しくらい楽しみを見つけても良いではないか。

「あっ、あまり重く考えないでね」

「よのはさんが一番ですね」

「えっ」

「オレの国の民、第一希望者です」

なんだか嬉しくて、小指を出せばアリババくんは私の小指に自らの小指を絡めてくれた。

「ありがとうね」

「オレの方こそ」

アリババくんは、やはり優しい王になると思う。絡めた小指に、ただ願う。
どうか実現しますように、と。
アリババくんの国は、きっとシンドリアのように優しい風が吹くだろう。



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