冥王星にさよなら
□思いの丈のちがい
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ジャーファルがよのはの傷の手当てから返ってくるなり、大きなため息を吐いた。
「ハァ」
「何かあったのか」
そう問えば、ジャーファルはジト目で此方を見ていた。何か文句を言いたそうなその顔に、よのはとのやり取りで何かあったことが理解出来た。
「よのはが…、いえ何でもありません」
そう言いかけ途中で喋るのを止め、言葉を濁す。
妙なところで止めるのだから、続きが気になってしまう。視線でジャーファルを促せば、何やら上手い言葉を見つけているようであった。
「よのはは、真っ直ぐ過ぎて不安なんですよ」
「ああ、それはわかる」
よのはは、あまりに真っ直ぐで。そんなに真っ直ぐでなくてもよいと言いたくなってしまう。もっと、緩くなってもよいのだと。
たが、ジャーファルが口にした台詞はよのはと何かあった後の結果である。
こちらとしては、ジャーファルがそう口にするまでの過程を聞きたい。
ジャーファルもそれはわかっているようで、口を重たそうにし言葉を続けた。
「よのはが、シンに恩返しをしたいそうです」
「ほぉ。それは、嬉しいなぁ」
「ですが、シンは何でも持っているのに自分が返せるものがあるのか、とても悩んでいます」
「よのはらしいな」
本当によのはらしい。
こちらとしては、よのはが笑ってこれから生きていってくれるならそれで十分だと云うのに。
「なので、シン!」
ジャーファルが先ほどの不安気な顔から、急に厳しい顔つきになる。
「くれぐれも、よのはに変なことを言わないで下さいよ」
信用ないな、とシンドバッドは笑った。
**
執務中、休憩だと言い部屋を飛び出したシンドバッドは気ままに散歩を楽しんでいた。
いくらなんでも、あの量を一日で終わらせろとは。ジャーファルは無理を言うなぁ、とひとりごちた。
宛もなく散歩をしていると、木陰に寄りかかるよのはの姿を見つける。
「こんにちは」
よのはもこちらに気づいたようで、笑顔を向けてくれた。
「調子はどうだい」
「あと少しで、包帯がとれるんですよ」
陽気に左手をチラつかせ、回復している様子を見せた。そうか、と笑えばよのはは嬉しそうにはい、と頷いた。
何気なく隣に腰を降ろす。よのははびくつくことをしなかった。以前なら、きっと恐縮して縮こまっていただろうと思うとその変化が嬉しかった。
「よのはは何をしていたんだ」
「考えごとを」
「オレへの恩返しのことについてかな」
よのはは、少し驚き困ったように笑った。
「シンドバッドさんは、私に何をして欲しいですか」
「君にか」
「はい」
「それに答えて、よのははどうする。どんな無理難題も叶えてくれのか?」
「がっ、頑張ります」
「だが、残念なことにないんだ」
しゅん。よのはが、一気に落ち込んだ。勘違いをしないように、説明をする。
「よのはに出来る出来ない関係なく、本当にないんだ」
「じゃ、私はシンドバッドさんに何をしたらいいんですか」
今にも泣き出してしまいそうなよのはに、弱ったなぁと頭を掻いた。
「…3日後。また、同じ質問をするので、それまでに考えておいて下さい。あと、私があの時言った言葉に嘘はありませんから」
「あの時、」
「アナタが私を必要とするなら全力で尽くします」
よのは、やはり君はオレを口説いているのか。
ジャーファルがいたら、怒鳴られてしまいそうなことを考えてしまった。