冥王星にさよなら

□だって一番だもの
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どこが、と言われれば上手く言葉は出て来なかった。
けれど、確かにそれは感じるのだ。
変わった、と。
シンドバッドを纏う雰囲気が、ある日を境に一変したとよのはは思う。
どこが、どのようにと口で説明出来ないのが歯痒いのだが、シンドバッドの中で何かがあったのは確かだと確信に近い何かをよのはは感じていた。
しかし、周りの人間に聞いてみると皆、頭を捻るばかりだった。自分の思い過ごしだろうかと不安に感じた頃、ヤムライハとシャルルカンが口を揃え頷いた。
─どこが、というわけではないが変わった、と。
どうやら、八人将の間ではシンドバッドの変化について持ちきりらしい。
よのはは、自分の感じとった変化が間違えでないことに安堵した。
ここでよのはは、ジャーファルなら何か知っているかもしれない、と云う言葉が頭を過る。善は急げ。
ジャーファルを探しに、よのははぱたぱたと駆け出した。

「ジャーファルさん!」

よのはが呼べば、笑顔を向けてくれるジャーファルがどうしようもなく好きだった。嬉しく、更に顔が綻んだ。

「どうかしたんですか」

「ジャーファルさんは、気づいてます? シンドバッドさんの変化に」

これまでの話を振り返るように、よのはは語り出す。すると、ジャーファルは驚いた顔をした後、困ったように微笑んだ。

「参りましたね」

「何がです」

よのはの問いに、ジャーファルは返すことなく困ったように微笑んでいた。
ジャーファルは、知っているのに敢えて隠しているようであった。



**



この疑問を本人に問いかけていいものか、よのはは考えていた。もし、答え難いものでシンドバッドを傷つけてしまったら。
だが、それでも何故だが聞かなければいけないような気がした。違う。
知りたかった。ただ、純粋に知りたかった。
シンドバッドの纏う雰囲気が変わった理由を。

「シンドバッドさん」

「やぁ、よのは」

シンドバッドが優しく微笑む。よのはは、ゴクリと唾を飲み意を決して問う。

「シンドバッドさん、最近何かあったんですか」

「どうしてだい」

「上手く言葉に出来ないんですが、雰囲気が変わった気がするんです」

ピクリ、微かにシンドバッドの肩が揺れたのをよのはは見逃さなかった。
真相に一歩、近づいたような気がしよのはは一瞬笑みを溢しそうになり慌てて引っ込めた。
シンドバッドが、困ったように微笑んでいた。
ジャーファルと同じように。
よのはの胸が、ずきずきと痛む。聞かなければよかった、と後悔の念が押し寄せた。

「すいません」

「何故、よのはが謝るんだ」

「言いづらいことなのに、ずかずかと問い質してしまって、」

シンドバッドは、怒るわけでも悲しむわけでもなく微笑みながらよのはに告げる。

「よのははずるいなぁ」

その言葉は咎めるものでなく、仕方ないなぁと意味が込められていた。
よのはは何が狡いのかわかりはしない。ただ、シンドバッドが笑ってくれたことを嬉しく思う。

「しかし、よのははオレをよく見ているな」

ポツリと独り言に近い言葉をシンドバッドが溢し、よのはは勢いよく返した。

「当たり前じゃないですか!」

自信を持ってそう返せば、シンドバッドは幸福そうに笑っていた。



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