冥王星にさよなら
□たんじゅんなきみ
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だらしない程の笑顔で、全身体から楽しいと云う気持ちが溢れているよのはにシャルルカンはやるせない気持ちになった。
─気づけって、よのは
普段のよのはなら気づくようなことも、こうなってしまったらもう駄目である。
「シャルルカンさん、ひぃー」
かれこれ数十分前から、この状態である。何が面白いのかシャルルカンに向けて言葉を発する度に、よのはは腹を抱えて笑った。
自分の目の前にいるよのはは、ただのアホであり馬鹿者である。だが、シンドバッドの隣に並ぶよのははシャルルカンが知らないよのはであった。
テキパキと仕事をこなし、穏やかな笑みを浮かべているよのはを見た時、シャルルカンは素で「どうした、何か変なものでも食べたのか」と言ってしまいそうになった。
よのはは人に対して優劣をつけているわけではない。どれもよのはであり、誰とも対等に接しているのだ。
だから、尚更やるせない。
シャルルカンは、馬鹿なよのはと一緒にいる時間が長い。だからそれに気づけたのだが、それをそう思っていない人物がいることに早く気づくべきだ。
いや、気づかせるべきだ。
どちらにも。
よのはにも。
シンドバッドにも。
よのはは、気づいていないようだが東の窓からシンドバッドが此方を眺めている。表情は一切変わらない無表情。
恐怖以外のなにものでもない。
「よのは」
声音を普段より低めに発すれば、よのはの表情は一瞬で変わる。
「どうかしたんですか」
馬鹿なら少しは救いがあったのになぁ、と独りごちる。
シャルルカンの気持ちなど何も知らないによのはの頭を叩く。
パシン、と一ついい音がした。
「自分の好意は、はっきり相手に伝えておけよ」
「どういうことですか??」
「そのうち、わかるだろ」
するとよのはは、小さく笑う。何だ、とシャルルカンが言葉を発する前によのはが顔を綻ばせた。
「私、わかりやすいと思いますよ?」
「何が」
「好意が」
「いや、わかんねーよ」
「えぇ、わかりやすいですよ!!」
「どの辺りがだ。言ってみろよ」
「だって私、好きな人の前でしか笑いませんよ?」
「ハッァ?」
「好きな人の前でしか、こんなにふにゃふにゃな顔しませんよ」
どこか満足気にいうよのはに開いた口が塞がらない。
つまり、この城内の人間は全員好きってことじゃねーか。
シャルルカンは、頭を抱えた。