君がくれたもの

□Ep.5 望まぬ対面
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「では、行きましょうか。」
「はーいっ。行きましょう、イオン様!」
「えぇ。ではアッシュ、僕たちは陛下に親書をお渡ししてきます。」
「はい、イオン様。ジェイドとアニスも、くれぐれも丁重にな。
特にアニス、お前は玉の輿とか余計なこと考えないで、しっかり任務を全うしろよ?」
冗談っぽく付け足されたその言葉に、アニスの頬が餅のように膨らむ。
「ぶーぶーっ!アッシュに注意されなくたってそんなことしないよぉ!
アニスちゃんは優秀な史上最年少導師守護役(フォンマスターガーディアン)なんだからね!!」
「ははっ、悪い悪い。まぁ、とにかく気を付けてな。」
「もーっ、子ども扱いしないで!」
ポンポンと頭を撫でるアッシュの手を振り払うと、アニスはイオンの手を掴んでさっさと馬車に乗り込んでしまった。
残されたアッシュとジェイドは、苦笑いを浮かべつつ顔を合わせる。
「やれやれ、何だかんだ言ってもまだまだ子どもだな。」
「そうですねぇ。今からあの様子では、城に着いてからが少々心配ですが。」
「確かにな(苦笑)でも、多少のトラブルならジェイドが何とかしてくれるんだろ?」
「ーっ!―…やれやれ、貴方まで他力本願ですか?」
僅かに照れの浮かんだ表情を隠すように眼鏡を押し上げつつ言えば、アッシュはあっけらかんと笑って答える。
「だって自分で何とかしようにも、俺は城には入れないんだし。」
『あ、ごちそうとか出たらお土産よろしくー。』と続けるアッシュは、顔を覆う不気味な仮面さえなければ、年相応の明るい青年なのだろう。
その仮面の意味を昨夜勘づいてしまったジェイドは、不憫に思いつつも口には出さない。
「大佐ぁー、置いてっちゃいますよーっ!」
「ほら、お呼びだぜ、旦那。」
アニスの呼び声に『やれやれ、最近の若者はせっかちでいけませんねぇ。』と言いながらもジェイドも馬車に乗り込み。
キムラスカとマルクトの未来を託された導師を乗せたその馬車があっという間に遠くなっていくのを、アッシュは一人で見送った。

「さてと、3人が戻ってくるまでに、報告書とシンクへの手紙でも書くかな…。」
馬車が完全に見えなくなってからポツリとそう呟き、宿に戻ろうと踵を返す。

すると、彼の目に予想外の人物の姿が映った。

「アッシュ、何故お前がキムラスカに居るんだ?」
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