君がくれたもの

□Ep.7 導く者
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「―…。」
「イオン様、大丈夫ですかぁ?顔色悪いですよ?」
「ーっ!心配をかけてすみません、アニス。
僕なら大丈夫です。」
ですが…、と顔をしかめて、イオンは窓の外を見る。
「アッシュは、大丈夫でしょうか…?」
その呟きに、ジェイドとアニスは顔を見合わせた。
導師イオンを捕らえるべく、ヴァン謡将がこちらへ向かっているとの情報連絡の手紙には、こう書かれていたのだ。

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緊急連絡;
あまり時間が無いから、用件だけ簡潔に書くな。
さっき、イオン様達が城に向かったあと、宿の前でヴァン・グランツ謡将と遭遇した。
一応、俺が貴方達と居たことや目的は巧く誤魔化したけど、ヴァンは今から城に導師イオンを迎えにいくと言ってた。
恐らく、今ヴァンに会ってしまったらイオン様は強制的にダアトへ連れ戻されるだろう。
いくら親書を無事に届けたあととは言え、それだけで戦争を止められるとは思えない。
まだまだ余談を許さない状況だ。
そこで、アニスとジェイドには、イオン様を連れて、城から上手く逃げ出してもらいたい。
…とは言っても、強行突破は無理だろうから、こっちでも逃げやすいようにサポートさせてもらうよ。
この手紙が届いてから数十分以内に、俺がファブレ公爵邸に乗り込んで、警備を引っ掻き回す。
ファブレ公爵邸は、今3人が足止めを食らってる城からも近いから、そこに危険人物が現れたとなれば、城の方でも騒ぎが起こると思う。
その危険人物から、『導師イオンを護るため』と言う大義名分で、何とか逃げおおしてほしい。
俺はファブレ公爵邸から脱出し次第、一度チーグルの森まで戻って身を隠すから、もし無事に逃げ出せたなら、そこで落ち合いたい。
健闘を祈るよ。
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そのアッシュの作戦通り、先ほどからドアの向こうが騒がしい。
やれ、ファブレ公爵邸に不審者が現れたとか、その騒ぎに乗じて公爵家の一人息子が屋敷から消えたとか、そんな情報が行き交っているのがわかった。
恐らく、もう程となくしてこの部屋にも誰かがその情報を伝えに来るだろう。
しかし、心優しいイオンとしては、自分の身よりアッシュの安否が気になって仕方がないようだ。
そんなイオンを見かねて、ジェイドは一旦メガネを押し上げてから口を開く。
「イオン様のお気持ちもわからなくはないですが、彼なら恐らくは大丈夫でしょう。」
「大佐ぁ、何で言い切れるんですかぁ?」
「先ほどから聞こえてくる情報には、『不審者が現れた』という情報はあっても、『不審者を捕らえた』という情報は全くありませんから。
恐らく、アッシュはもうファブレ公爵邸から逃げ出して、チーグルの森へ向かっているでしょうね。」
「ま、アッシュ強かったですもんねー。大佐の太鼓判もありますし、心配ないですよ、イオン様!」
「そう…ですね。」
「そうそう!それに、アッシュがせっかく頑張ってくれたんですから、私たちも上手く逃げないと!ですよね、大佐♪」
「アニスの言う通りです。さぁ、そろそろここを発つ支度をしておきましょうか。」
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