幸せの欠片

□テノヒラ
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暖かい日差しの差し込むなか、鮮やかな朱色に紅葉した葉が宙を舞いヒラヒラと落ちてくる。
そのうちの1枚を何となく手のひらで受け止めると、俺の膝上でうとうとしていたミュウがピクリと大きな耳を動かした。
ミュウ:「ご主人様、何をしてるんですの?」
ルーク:「別に何もしてねーよ。
ただ、綺麗な葉だなと思っただけ。」
そう言ってさっき掴んだ葉を見せてやると、ミュウは納得したようにまた昼寝を始めた。
ヴァン師匠達の野望を打ち破ってから1ヶ月、平和になったはずだった世界に再び異変が起きた。
その異変をなんとかすべく、かつての仲間達と再会を果たしたのはわずか1日前のことで。
本当なら遊んでいる間なんてないんだろうけど、久々に皆集まったんだからピクニックでもしたいと言うアニスのわがままについつい流されてしまった。
そんなわけで、ノエルおすすめの紅葉が見られる公園で、今日1日は久しぶりの再会を楽しむことになった。
とは言っても…
ルーク:「暇だな…ι」
弁当の用意をしていたはずのガイは、アニスとナタリアが手伝おうと近づいたら光並みのスピードでどっか行っちまったし。
イオンはそんなガイを心配してアニスと探しに行っちまったし。
ジェイドは一人で優雅に紅茶飲みながら新聞読んでて話しかけられる雰囲気じゃねーし。
一番会いたかったティアは、アニスにリクエストされたたくさんの料理を作るので忙しそうだ。(ちなみに手伝おうとしたら「邪魔になるからいいわ。」と断られてしまった。次屋敷に帰ったら、料理長に料理の修行をしてもらおう。)
それでもつい先ほどまでは、足元のやかましいチーグルとの会話で退屈しのぎが出来てたものの、うららかな日差しに誘われるように今は夢の世界を漂っているようだ。
楽しい夢を見ているのか、時々ふにゃりと笑って大きな耳をパタパタと動かしている。
その幸せそうな表情に何だか腹が立って、起こしてしまわないくらいの強さでその小さなオデコを指で弾いた。
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