幸せの欠片

□children love
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―…人目を引く鮮やかな赤い髪、優しさを称える深い緑色の瞳を持つ彼は、幼い頃私に誓ってくださいました。
「いつか俺たちが大人になったら、この国を変えよう。貴族以外の人間も貧しい思いをしないように…、死ぬまで、一緒にいて…。」
ですが、その誓いの直後に貴方は私の前から消えてしまいましたわ…。
「過去にばっか囚われてたら前には進めないだろ?だから俺は、昔の記憶がなくても大丈夫だ。」
何日も不安な夜を過ごし、ようやく帰ってきてくださった彼は、"全て"をなくしてしまっていました。
記憶はもちろん、言葉も、王となるために今まで積み重ねてきた知識、習慣、剣術、そして…私への想いも…。
それから7年間、私は必死に貴方の記憶を取り戻そうとしましたわ。
あの誓いの場所へまだまともに歩くことも出来なかった彼を無理矢理連れていったり、貴方がよく弾いていたピアノを無理矢理教えようとしたり…、今思えば、全ては無駄なことだったのですけれど。
そしてマルクトと我がキムラスカの和平のためにと出た旅の中で、私は"彼"と再会しました。
冷たい仮面で隠されていた素顔は、昔となにも変わってませんでしたわね。
厳しい表情、ぶっきらぼうな口調、でもその中には、いつでも私を思ってくださる優しさがありました。
そして同時に、私がもう1人の"彼"に感じていた違和感の正体もわかりましたわ。
記憶を無くした"彼"と過ごして、私が感じていた"本当に彼はルークなのでしょうか"と言う疑問は、当たっていたのです。
記憶を無くす前に私が愛していた"ルーク"と、屋敷に帰ってきてくださった後に私が追いかけ続けた"ルーク"は、姿は同じであれど全くの別人だったのですから。
そして、別人だとわかったとき、私は最低な事をしました。
まだたった7年しか生きていなかった"ルーク"が、ヴァンに騙されて犯した、アクゼリュスの崩壊と言う罪…。
その罪は、多少なりとも私達全員が背負うべき事でありましたのに、私は"ルーク"に罪を全て押し付け、彼を拒絶してしまいました。
"彼は本物のルークではありませんわ"と。
その後、冷静になったガイが"ルーク"の為にユリアシティ残ると言ったときも…、「貴方の親友は"ルーク"でしょう?本物のルークは今ここに居ますわ!」なんて、彼だけでなくガイの気持ちまで踏みにじるような言葉を言ってしまいました。
あの時の記憶は、紛れもなく私が"ルーク"に犯した罪であり、ましてや私は彼にずっと自分の理想のみを押し付けていたのですから、嫌われる理由こそあれ、優しくされる理由なんて……。
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