幸せの欠片

□月の光のその意味は
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「―…。」
セレニアの咲き誇る花畑で、仲間達に迎えられ帰還してからもう半年近いだろうか。
今ルークは、バチカルでティアと同居をしていた。
「ルーク、そんな格好でテラスに出ていたら風邪を引くわよ。」
テラスで夜風に当たりながら空を眺めていると、ゆったりしたワンピースをまとったティアが声をかけてきた。
「まだそんなに冷えてないし平気だよ。それより、ティアもこっちに来いよ。」
ルークにそう言われ、仕方ないわねなんてため息をつきつつ隣に並ぶ。
ルークが見上げる先を見ると、そこには輝く満月が浮かんでいた。
「月を見ていたの?」
「あぁ。…あの時も、こうやって月を眺めてたなって思ってさ。」
「…そう、そうだったわね…。」
2年前、世界を救うのと引き換えに自らが消滅の危機になってしまった最愛の人。
その最終決戦の前の夜も、ルークはこうして月を眺めていた。
青白い月明かりの下の彼はとても幻想的で…、それ以上に、酷く儚げだった。
そのまま、夜の闇に溶けて消えてしまいそうで、堪らず声をかけたのがつい昨日のことのように思い出せる。
「―…あら?」
「ん?どうしたティア。」
その時のことを思い返していたら、ふとある疑問を思い出した。
「ルーク、あの時何か言いかけて止めてたわよね?」
そうだ、あの時彼は一度私の名を呼んだのに、何故か言葉を濁してしまって。
結局その後彼が呟いたのは「月が綺麗だな。」だけだった為にずっとモヤモヤしていたのを覚えている。
「ーっ!!//あっ、あー、そうだったっけ。忘れちゃったなー!」
薄暗いテラスでもわかるくらいに赤くなってあからさまに目線を泳がせるルークに、尚更疑問は高まって。
「ルーク、貴方、私に隠し事はしないって約束したわよね?」
「え、あ、いやー、それは…ι」
「したわよね?」
「うっ…、確かにしたけどよ…。」
言いにくそうに頬を掻くルークに、ティアは強く詰め寄った。
「ルーク…、言って。」
「わ、わーったよ…。その代わり、怒るなよな…?」
そう言うと、別に誰が聞いているわけでもないのに、ルークはティアを引き寄せて何かを囁く。
「なっ…!//」
それを聞いた途端、ティアは先ほどまでのルーク以上に真っ赤になってしまった。
「…ったく、だから言いたくなかったのに。」
そんなティアの姿を見て苦笑しつつ、ルークはもう一度彼女を抱き寄せた。
「なあ、ティア。」
「…何?」
「『月が綺麗だな。』」
「…えぇ、そうね。」
先ほど彼に教えてもらったその言葉の意味を感じ、ティアはそっとルークにもたれ掛かり目を閉じる。
温かな月明かりの下、2つの影が重なった。


『ジェイドに教えてもらったんだ。"月が綺麗ですね"って言うのは、"愛してる"って意味だって。』

…月の光のその意味は…

不器用で愛しい人がくれた、優しい愛のメッセージでした。
→あとがき
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