幸せの欠片

□初恋の君は時空を超えて
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「ねえねえ、皆の初恋っていつ!!?」
それは、アニスのそんな一言から始まった。
「アニスったら、突然どうしたの?」
「この間読んだ本に初恋について書いてあったから、皆はどんな初恋だったのかなーって。」
どうやら、いつものようなイタズラ心ではなく純粋な好奇心からの質問だったらしい。
興味津々なアニスに促されて、その場に居たメンバーも会話に参加してきた。
「私は5才の時ですわね。相手は…」
「もちろんアッシュでしょ?でも、なんで意識するようになったの?」
「私が5才の頃、城から脱走しようとして窓から飛び降りたことがあったんです。」
「えぇっ、危ないじゃない!」
「そうですわよね、我ながら無謀でしたわ。でもその時、アッシュは身を呈して私を受け止めて下さいましたの…//」
「なるほどね〜、アッシュってばやるじゃーん!!」
「確かに、あれはなかなかにカッコよかったよな。」
「ほぇ?ガイもその場に居たの??」
「いや、俺はナタリアが飛び降りた窓の上の階に居たんだが、丁度飛び降りたとこを見ちまってな。焦ってかけおりたら、アッシュがナタリアを抱き止めてる所だったってわけさ。」
「ふーん、そうなんだ。じゃあ、そんなガイの初恋は?」
「え!!?あ、いやー、それは…。」
「あー、やっぱいいや。女嫌いのガイの恋バナなんてたかが知れてるもんね。じゃあ、大佐はどうですか?」
「俺まだ何も話してないのに…。なんだこの敗北感…(泣)」
「私は、そう言う理性的でない感情は持ち合わせていませんから。」
ガイの呟きは完全にスルーされ、ジェイドからは予想通りの切り返しが来た。
アニスも返答の予想くらい出来ただろうに、『なんだ、つまんなーい!!』と騒いでいる。
そんな姿が微笑ましくて、つい小さく笑い声を漏らしてしまった。
「ふふっ、アニスったら…。」
「あーっ、ティア笑った!!ひっどーいっ!」
「ごっ、ごめんなさい、つい…。」
でも、それがいけなかった。
こっちを向いたアニスに、今度は私がターゲットにされてしまったのだから。
「そう言うティアはどうなの!!?初恋の相手は??」
「えっ!?//わ、私は…」
「あ、言っとくけど『兄さん』とかはノーカンだからねー(笑)」
「そっ、そんなこと言わないわよ!!//」
「まっ、どうせティアの初恋もルークなんでしょ?」
ニマニマと笑うアニスにカッとなって、私はついこう答えてしまった。
「ちっ、違うわよ!!//私にだって、ちゃんとした初恋の相手くらい居たんだから!//」
「えっ!!?」
―……。
しまった、と思ったときにはもう遅くて、皆はしーんと静まり返ってしまった。

「「「嘘ぉぉぉっ!!?」」」
「ほっ、本当ですの!?お相手はどんな方なのですか!!?」
「誰!!?誰なの!!?」
「ちょっ、アニス、ナタリア、2人とも落ち着いて!」
勢いよく詰め寄ってくる2人と距離をおいて、チラリと時計を見た。
ルークが買い出しに出てからまだ30分も経っていない。
話しても聞かれる心配は無い…わよね?
「ねぇねぇ、聞かせてよーっ!」
「私も是非お聞きしたいですわ!」
「ぼ、僕も興味が…。」
「おいおい、イオンまで…(苦笑)ま、確かに気にはなるけどな。」
皆の好奇の目は、今や完全に私に向いていて。
「―…わかったわ、話せばいいんでしょう?」
さっきの自分の失言を後悔しながら、私は初恋について話すことになってしまった。
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