君がくれたもの

□Ep.4 それぞれの想い
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〜エンゲーブ〜
「さて、ライガ問題も一応片付いたことですし、そろそろ本題に戻りましょうか。」
「…本題とは?」
ここはエンゲーブにある、小さな宿屋の一室。
その薄暗い部屋で、俺はマルクトの軍人…ジェイドと向き合っていた。
「貴方が信用出来るかどうか、正直私はまだ半信半疑ですが…、まぁいいでしょう。
お話しましょう。」
「アッシュ、今僕たちは、マルクト帝国皇帝ピオニー九世陛下より、キムラスカランバルディア王国への親書を預かっています。」
「親書?」
「はい。今やキムラスカとマルクトは、いつ戦争が始まってもおかしくない程の緊張状態に陥っています。
一刻も早く親書を届けなければ危険な状態です。」
「…成る程、それでイオン様を連れ出したのか…。」
「ええ、親和条約を結ぶには、両国にとって影響力の強い、導師イオンのお力が必要だったのですよ。」
「まぁ、それなら致し方ないとは思うが…、だからって何も誘拐すること無かったんじゃないか?
お陰でダアトは大パニックだぜ。」
やれやれと言わんばかりにため息をつくアッシュに、アニスが食って掛かった。
「何も知らないくせに勝手なこと言わないでよね!
私たちは、イオン様のご意志でダアトからイオン様を連れ出したの!!」
「ちょっ、わかった!
わかったから落ち着いて!(汗)」
「そうですよアニス、落ち着いてください。」
「全く、近頃の若者ときたら、落ち着きがなくて困りますねぇ。」
あれ…、俺が責められてたはずが、いつの間にかアニスが責められてる?
「大佐もイオン様も酷いですよぅ!
アニスちゃんはイオン様のことを一番に考えて行動してるのにぃ、そんな仮面野郎の話聞くことないですよぉっ!」
「はは…。」
仮面野郎…か、まぁアニスが反発するのも無理はないか。
だが、今はそんなことより…。
「俺達も、キムラスカとマルクトの戦争は止めたいと思ってる。
親書を届けるまで、良ければ同行させては貰えないだろうか?」
アッシュの思わぬ申し出に、3人が顔を見合わせた。
「しかし、貴方は神託の盾騎士団の六神将でしょう。
六神将はヴァンの管轄です、信用なりませんね。」
「ジェイド、そんな言い方は止めてください。
僕を拘束していたのはヴァンではなくモースです。」
「えぇ、それはもちろんわかっていますよ。
ですが、そのモース様はヴァン謡将と繋がっています。」
「―…ジェイド・カーティス大佐、貴方は噂通りの素晴らしい頭脳をお持ちのようだ。」
ジェイドの問いに、アッシュが困ったような複雑な笑顔を作る。
「でも、その考えは外れてるぜ。
俺は確かに六神将ではあるが、もうヴァンに従うつもりは無い。
俺は今、ヴァンとモースの企みを阻止するために動いてる。
…イオン様、信じて頂けますか?」
アッシュが屈んで、イオンと目線を合わせる。
「…信じます。」
「イオン様!!?
ちょっ、本気ですか!?」
イオンの言葉にアニスは騒ぎ立てるが、ジェイドがそれを片手で制した。
「まぁ、イオン様がそう仰られるなら良いでしょう。
ただし、少しでも怪しい行動を取ればモルモットになって貰いますよ♪」
「あぁ、わかっ……ん?
モルモット??」
ジェイドの言葉に一瞬うなずきかけたアッシュだったが、不可解な点に気づき思わず聞き返した。
「あぁ、ちなみに"モルモット=実験台"です。」
「爽やかな笑顔で恐ろしいことを言うな!!!!」
笑顔で言い放つジェイドに悪寒が走ったのだろう、少しだが鳥肌が立った。
「実験台が嫌なら、くれぐれも怪しい行動はしないでください。
くどいようですが、私は貴方達を信用していませんから。」
「あ、あぁ、気を付けるよ…ι」
"あんたの方がよっぽど怪しいじゃないか!!!"と叫びたい気持ちを抑えつつ、アッシュは導師イオン一行と共に改めてキムラスカへ向かうのだった。
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