君がくれたもの

□Ep.4 それぞれの想い
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〜光の王都・バチカル〜
「今日もいいお天気ですわね、ルーク。」
「…あぁ。」
「こんなお天気の日なら、いつものティータイムも格別ですわね。」
「―…あぁ。」
「…ルーク、ちゃんと聞いていますの!!?」
「あっ、あぁ、すまないナタリア…。」
ヴァン師匠が導師イオンの捜索の為に経ってからもう1ヶ月近く過ぎた。
ただでさえ屋敷に閉じ込められ、退屈な毎日だったのにわずかな楽しみの1つだった剣術の稽古が受けられなくなり、ルークは毎日ぼんやりと過ごしている。
そんな彼を励まそうと、今まで以上に献身的に通いつめているナタリアであったが、今のルークには愛しい婚約者の言葉も届かぬようで、さっきから返事も上の空であった。
「ヴァン謡将が来てくださらないとなると、まるで抜け殻のようですわね…。」
「―……。」
「またぼんやりして…、貴方は私よりもヴァン謡将の方が大切だと仰りたいんですの!!?」
ここ1ヶ月溜め続けた不満が爆発したと言わんばかりのナタリアの剣幕に、ルークがハッとしたように答える。
「そっ、そんなことはない!
俺はっ…!」
「『俺は』…なんですの??」
勢いよく立ち上がったルークの言葉に、ナタリアが瞳をキラキラ輝かせて詰め寄る。
「いや、だから、俺は…、なっ、ナタリアを、愛している…///」
「まぁ!嬉しいですわ!!」
先程までの剣幕はどこへやら、ナタリアはパアッと笑みを浮かべてルークに抱きつく。
そんな公爵家子息と姫君の姿を、メイド達は微笑ましく見守っていた。
と、2人がお茶をしている中庭へ、公爵夫人がやって来た。
「まぁまぁ、仲がよろしいこと。」
にこやかに微笑みながら、ルークの母であるシュザンヌは息子とその婚約者と共にテーブルにつく。
「母上、どうされたのですか?」
「ふふっ、部屋からあなた達がお茶をしている姿が見られたので下りてきたのです。
私もご一緒しても良いかしら?」
「もちろんですわ、お義母様!
今すぐ紅茶を淹れさせて頂きますわ。」
驚いているルークに反し、ナタリアは嬉しそうに紅茶を淹れている。
しかし、そんな母と婚約者を横目に、ルークは考えていた。
(ヴァン師匠はいつになったら帰ってくるんだ?第一、導師が失踪するなんてただ事じゃない。
今この世界で、一体何が起こってるんだ…?)
未だ帰還しない師を思い、ルークは空を見上げた。
そこに広がる青空は、何だか霞んで見えた気がした。
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