君がくれたもの

□Ep.5 望まぬ対面
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「アッシュ…、もう一度聞くぞ。何故お前がここに居るんだ?」
「ヴァン師匠…!」
親書をインゴベルト陛下に渡すべく城へ向かったイオン達を見送った直後、アッシュの視界に入ったのは、何と導師イオン捜索の為旅に出ていたヴァン謡将であった。
(マズイな…、今ヴァン師匠に俺の策に勘づかれては後々動きにくくなる。
でも…、幸いこのタイミングなら俺が導師イオン達と一緒だったことはわからないはず。
何としても、ここは上手く切り抜けなければ。)
そこまで考えてから、アッシュは敢えて明るめのトーンで口を開いた。
「何でも何も、師匠を探しに来たんですよ!」
「何?私をか。」
「はい!だって俺がせっかくダアトに正式に入ったってのに、師匠全然帰ってこないし…。」
『剣の稽古つけてくれるって約束したのに!』と付け加えれば、ヴァンは呆れたように笑った。
「そうか…、私に会いたくて来たのか。全く、お前は寂しがり屋だな。
いい加減、もう少し大人にならなければいかんぞ。」
「でも…」
「でもじゃない、そんなことでは、シンクやアリエッタに笑われてしまうぞ?」
「はーい…。」
「まぁ、心配をかけたのはすまなかったな。
導師イオンがなかなか見つからず、必死で探し回っていたのだ。」
「それはリグレット教官から聞きました。で、昨日ダアトに導師イオンがキムラスカに向かっていると言う情報が入ったので、師匠ももしかしたらキムラスカに居るかと思って。」
「なるほど、良い判断だな。」
ヴァンの誉め言葉に照れたように笑って、改めてアッシュはヴァンを見つめた。
「まぁ何にせよ、イオン様の居場所も見つかったならもう探すことないでしょ?」
『師匠も一緒に帰ろうよ!』
と言うと、頭を軽く小突かれた。
「痛っ!」
「全く、ワガママを言うんじゃない。
私の今の仕事は、イオン様をご無事にダアトに連れ帰ることなのだ。」
「そうなんですか?」
"連れ帰る"、ではなく"捕まえる"だろ?と思いつつ、今はヴァンの話に乗っておく。
「あぁ。だから、私は今からイオン様をお迎えに行かねばならん。」
そう言って、ヴァンは軽くアッシュの頭を撫でる。
「イオン様とお会い出来次第、私もすぐにダアトへ戻る。
だから余計な心配はせず、お前は先に帰りなさい。」
「え〜…。」
「アッシュ、いい子だから、私の言うことを聞いてくれ。」
昔と同じように穏やかな口調でそう言われ、アッシュは渋々うなずいて見せた。
「わかりました…。じゃあ、リグレット教官や皆とダアトで待ってますから。」
「あぁ、気を付けて帰るのだぞ。」
「はい!」
『では、私はイオン様の元へ向かう。』
と言い、辻馬車に乗り込んだヴァンはあっという間にその場を立ち去ってしまった。
「…こうしちゃ居られない、すぐにジェイドに連絡しないと…!」
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