君がくれたもの

□Ep.6 憎しみと友情と
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「お前は一体何者だ、何故この屋敷に侵入した!?」
剣にしっかり手をかけ、こちらを見据える金髪の男。
その男の鋭い眼差しを受けながら、アッシュは心のなかで舌打ちした。
(しまった、油断してたぜ…。まさかこんな所にも人が居るとは…。)
ルーク・フォン・ファブレを脱走させるべく、ファブレ邸に侵入して騒ぎを起こしたのは僅か数十分前のこと。
現在、屋敷に仕える者達は皆必死に侵入者であるアッシュを探し回っているため、屋敷の中は盲点となるだろうと見越して中に入ったのが間違いだった。
剣は未だに鞘に収まったままだが、雰囲気でわかる。
(こいつ…、かなりの手練れだ。)
一瞬でも気を抜いたらやられる、そんな風な緊張感に呑まれるアッシュだったが…。
「…どうやら、敵意はないみたいだな。」
「…え?」

そう言って、目の前の男はあろうことか、剣から手を下ろしてしまった。
「その仮面のせいでわかりにくいが、見たとこまだ子供じゃないか。この屋敷に何の用だい?」
「―…。」
穏やかなその口調に釣られて緩みそうになる気を引き締めつつ、なんと答えるべきか頭を回転させる。
今、ファブレの関係者に策を見抜かれては計画が台無しだ。
さて、どうすべきか…。
「暗殺者や誘拐犯ってわけじゃあないだろ?それなら、最初に侵入してきた時点でルーク坊っちゃんを襲ったはずだ。」
『そうだろう?』と問われて、静かに頷く。
(小手先の誤魔化しが利く相手じゃなさそうだな…。)
「大した奴だな、アンタ。騎士団に護られた屋敷の中で剣なんか持ち歩いて、アンタも騎士か何かか?」
ようやく口を開いたアッシュのその問いに、男は一瞬キョトンとしてから、弾かれたように笑いだした。
「あっはははは、違う違う!俺は一介の使用人さ。」
「…使用人?」
仮面の奥で、アッシュは密かに眉を潜める。
身のこなしからして、明らかにただの使用人じゃない。
この男、本当に何者だ…?
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