君がくれたもの

□Ep.7 導く者
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一方、城の門の所では、アッシュの思惑通り屋敷を抜け出し城にやって来た青年が騒いでいた。
「だから、俺はファブレ公爵家の一人息子、ルーク・フォン・ファブレだと何度も言っているだろう!とっとと通しやがれ、この屑が!!」
「ですから、今は城内にて大切なお客様のおもてなし中です。」
「ましてや、ルーク様は成人なさるまでお屋敷から出てはならないはず。信じられませんな。」
「お通し出来ません、どうぞお引き取りを。」
門を守る騎士団にそう言われ、ルークはあからさまに苛立った様子を見せる。
(クソッ、せっかくヴァン師匠に会えるチャンスだってのに、邪魔な屑どもだ…。)
先ほどルークの部屋に小柄な魔物が運んできた、一通の手紙。
その手紙によると、導師イオン捜索のため長らく会っていなかった師匠がこの城に来ていると言うのだ。
しかも、丁度よく屋敷で騒ぎが起こり、脱出して城まで来られたのだ。
ここまで来たら、何としても師匠に会わなければ。
(いっそのこと、実力行使か…。)
そう思い、ルークが腰に下げた木刀に手を伸ばした時…。
「まぁ、ルークではありませんか!」
「ーっ!ナタリア!!」
振り返ると、そこには視察用の服を纏った婚約者の姿が。
ナタリアも、驚いた表情でルークに駆け寄る。
「ルーク、貴方がどうしてこちらに?お屋敷から抜け出したのですか?」
「あ、あぁ、すまない…。」
「謝る前に、事情を聞かせて頂きたいですわ。とりあえず、中に入りましょう。」
「あ、あぁ…。」
「貴方達、何をしているのです!早く門をお開けなさい!!」
「「「かっ、畏まりました!!」」」
姫君の登場で、ようやくルークが本物だと信じたらしく、先ほどまで頑なに門を開かなかった騎士達が慌てて門を開き、ルークはやっと城へ入れたのだった。
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「さてと、お話を聞かせて頂けますわよね、ルーク。」
城に入り、何だか騒然としている使用人達を横目に、ナタリアの部屋へと通された。
出された紅茶を一口飲んでから、ルークは気まずそうに口を開く。
「その…、実は先ほど、俺の部屋に変な手紙が届いてだな…。」

ルークはその手紙の内容や、屋敷に現れた不審者の話、自分がその騒ぎに乗じて屋敷から脱走してしまったことを全て素直に話した。
大切な婚約者に、嘘をつきたくはなかったのだろう。
だが、ナタリアは…。
バンッ
「何て無責任なことをなさいますの!!」
「す、すまないナタリア。だが…」
「言い訳はいりませんわ!只でさえ緊急事態だとわかっているときに屋敷から抜け出して更に皆を不安にさせるなんて、王族としてあるまじき行為ですわ!!」
ナタリアの逆鱗に触れ、言い訳もままならずに散々叱られるルークだった。
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