君がくれたもの

□Ep.8 小さな相棒
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アッシュがチーグル達から思いもよらぬ真実を聞かされていたその頃、そこから少し離れた場所では…。
「あーもうっ、どこにも居ないじゃないかあのバカ兄貴!!!」
「兄様、どこ行ったのかな…。」
シンクとアリエッタによるアッシュの捜索が行われていた。
「だいたい、あの人昔からそうなんだよね。人にはやれ『危ないことはするな』とか『もっと自分を大切にしろ』だとか言う癖に自分はいっつも無茶しちゃってさ。説得力皆無だっての…。」
「―…でも、兄様いつも優しい…です。」
「そりゃそうだけどさぁ…。」
アリエッタになだめられても、シンクの怒りは治まらない。
まぁ、心配しているからこその苛立ちであるのもわかっているため、アリエッタも無理に落ち着かせようともしないのだが。
「まぁ何にせよ、このまま2人一緒にダラダラ探しててもきりがないね。二手に別れよう。」
「でも、兄様を見つけたあとはどうするの…?」
「もし見つけたら、空に向かってこの閃光弾を投げよう。その光が見えたら、イオン様達の所へ戻るんだ。」
『いいね?』とシンクに言われ、アリエッタが頷く。
そして、シンクは森の中心部へ、アリエッタは森の出口側へと捜索に向かったのだが…。
「なんか、森の感じがさっきまでと変わった…?」
先ほどまでは青々としていた葉っぱは青白く輝き、やかましかった魔物達の声もしなくなった。
初めは日がくれて夜になったせいかと思ったが、それにしたって様子が違いすぎ…。
グニュッ
「みゅーっ!!?」
「うわっ、何か踏んだ!!?」
考えながら歩いたせいで足元がお留守だった為か、いきなり柔らかい"何か"を踏んで飛び退く。
見ると、見事に足形の付いたチーグルが怒っていた。
「あぁ、チーグルか…。」
「みゅみゅうっ、みゅみゅみゅみゅっ!」
「あー、踏んづけて悪かったよ、ごめんごめん。」
「みゅーっ!!」
「うわっ、追いかけてこないでよ!!」
怒り心頭なチーグルは、猛スピードでシンクを追いかけ始めた。
小さくて可愛かろうが、流石は魔物と言うべきか、本気で追いかけられると意外と迫力があって。
結局、シンクはそのチーグルから逃げるように森の更に奥へと走っていくのだった。
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