幸せの欠片

□children love
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「ナタリア?」
「……。」
「おいナタリア、しっかりしろ!」
「ーっ!!」
夢と現実の境の様な世界から、誰かに呼ばれて一気に目が覚めました。
ここは…?
「大丈夫か、ナタリア。
うなされてたぜ?」
「ルーク…。」
そうでしたわ。
私はお父様から処刑宣告をされた後逃げ出して、昨日はベルケンドの宿に泊まったのでしたわね…。
「…ほらっ、いつまでもぼーっとしてねーで、朝飯にしようぜ!」
「えっ、えぇ。着替えたらすぐに参りますわ…。」
いつものように明るく声をかけてくださったルークにぎこちなく返事をして、「ですが、女性の部屋に無断で入るのはマナー違反ですわよ?」と注意をして。
「起きないからわざわざ起こしに来たのにお説教かよ…(苦笑)」
と呟きながら出ていくルークを見送ったあと、思わずため息をついてしまいました。
ルークは何故、私にいつも通りに接してくださるのかしら。
私は、本物の"ナタリア"では無かったのに…、今ならあのアクゼリュスのときのことで、私を責めることだって出来るはずです。
ですがルークは、不気味なくらいにいつもと同じですわね…。
「…いけませんわね、ウジウジしているのは私らしくありませんわ。」
適当な所で無理矢理考えを止めて外に出ると、アニスとルークが向かい合って談笑していました。
「お待たせ致しましたわ。」
「あっ、ナタリア、おはよーっ。」
「おはようございます。
他の皆はどうされましたの?」
「ジェイドはアイテムの補充と情報収集、ティアは料理当番だから食料買いにいった。
で、ガイは起きるなり朝飯も食わずに音機関を見に飛び出してったよ。」
「そう言われてみれば、ガイは昔から音機関には目がありませんでしたわね。」
「あぁ、ったく、ガキかってーの。」
「あら、貴方の方がよっぽど子供ではありませんの。」
言ってしまってからハッとして口に手を当てる私に、ルークは怪訝そうな顔をして。
「どうかしたのか?
今朝からちょっと変だぞ、具合が悪いなら今日は休んだ方が…ってナタリア!!?」
心配して下さったルークの声が急に裏返ったと思ったら、アニスがいきなり大声で…
「あーっ!!!ルークがナタリアを泣かせたーっ!!」
「いやっ、違っ、俺は何もしてねーぞ!!!
なっ、ナタリア、どうした?
大丈夫か?」
ルークとアニスの忙しないやり取りで、ようやく自分が泣いていたことに気がつきました。
「あら、どうしたんでしょう、私…。」
嘘です、涙の理由は、私自身が一番よくわかっています。
「心配をかけてしまってすみません。私は大丈夫ですから…。」
「ナタリア…。」
涙を指で拭って微笑むと、ルークとアニスは更に心配そうな表情になりました。
今の私は、そんなに酷い顔をしているのでしょうか?
でもごめんなさい、涙の理由を貴方に…ルークに話すわけにはいかないのです。
ただでさえ7年と言う長い期間私の理想とワガママを押し付け続けた彼に、これ以上甘えられませんわ…。
そう思い、「ちょっと出掛けてきますわね。」とルーク達に背を向けた。
「―…ナタリアっ!」
パシッと手を掴まれて振り返ると、ルークが私の手を握っていて。
「…時間あるなら、ちょっと付き合ってくれよ。」
そう優しく微笑まれて、私は手を引かれながらただ着いていくしかありませんでした。
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