高校生

□責任
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「ご趣味は…?」

「……お筝を少々」

「おぉ!さすが九条家のご令嬢 高貴なご趣味ですね」

「…ありがとう、ございます」

趣味と家柄は関係ないでしょう…
そうは思っても、それを口にして相手にこの縁談を断るように仕向ける事は出来ない

断って欲しいのに、家紋に傷を付ける事が私には出来ない
…弱い人間

乗り気じゃない相手なら、結婚する気が無いと素直に言っても波風は立たないけれど、こういう前のめりな相手は本当に困る

許嫁が居なかったのはマシだけど、マシって程度…

私の未来は、結婚して九条家の血筋を引いた子供を産んで育てるだけ
待っている未来はそれだけ

面白くも何ともない生き地獄
苦痛が待っているだけ

親が勝手に結婚相手を決めない所は思いやりを見せているつもりだろうけど、見合い相手は親の決めた人





「少し歩くわ…」

「…かしこまりました」


はぁ……

お見合いが終わった途端にため息が出る

花々が目を吹き出す春なのに私の心の内はまるで冬

高校生になってから着々とレールを引かれて行くレールの先には、きっとつまらない日々しかない

九条家の者としての義務

名を継ぎ繋いで行く為の義務

好きでも無い人と結婚する苦痛
先進国の仲間入りをしても遅れている考え方

私は結婚なんてしたくない
…いえ、男性との結婚なんてしたくない

どう頑張っても愛せないもの

私にとっての男性は、滅んでも気にしないレベル

滅んでも仕方ないわね、で済ませられる存在

 
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