死にたくない

□現在
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(コト…)


「…こんなもんか」


そう言っておれは帽子を脱ぎ手を合わせる


「早ェもんだな…」


あいつが死んでから4年


線香をあげ、ふと空を見上げる


一筋の涙が頬を伝う


「パパ〜?」


遠くでおれを呼ぶナオの声


「…何でもねェ、行こう」


気付かれないようにと強引に手で涙を拭う


「パパ見て!きれいでしょ!」


見ると、小さなナオの手からはみ出しそうなほど沢山の花


「…お前、これをどこで」


「ママのおはかのうしろにいーっぱいあったの!」


言って、ニカッと笑うナオ。


「そうか。ナオ、少しだけママに分けてやろう」


ナオは不思議そうな顔をしたが、すぐに笑顔になって「うん!」と言うと、お墓に花を置き手を合わせて戻ってきた。


秋奈、覚えてるか?


―――キボウソウ―――


余りにもそのまますぎる名前だが、おれ達で名付けた花


秋奈は何故か、この花を花瓶に入れた時だけとてつもない回復力を見せた


なんの害もなく、自然に。


理由はおれにも分からなかったが…


その内にその花を気に入ったお前は、名前がないなんて可哀想と言って仕事で忙しいおれを巻き込んで一晩中名前を考えた


それがキボウソウ。


ただ単純に希望を下さい、という意味だ


「…フフッ……」


だが、まさかこんなとこにまで生えているとは思わなかった


秋奈、お前は余程キボウソウを気に入ってたんだな


「??きょうのパパおかしい!わらったり、ないたり!」


泣いたり?
さっきのがバレてたのか?


子供には勝てねェな……


「悪ィ。ママの事考えてた」


「ママのこと〜??」


「あァ」


秋奈、ナオは本当にお前そっくりだ


笑った時に出来るえくぼ


サラサラな髪


穏やかな目


何もかも、だ


本当に父親はおれか?不安になるぐらいおれには似てねェ


そして何より……


「パパ!みて!!あれなんだろ!」


初めて見る物にやたら興味深い


気になる物は全部口に入れようとする


まるで小さいお前を見てるみたいだ


「花じゃねェか……それよりナオ、あんまり遠く行くな」


「はーい!」


返事だけは良いものの、それでもナオはどんどん遠くへ行ってしまう


「…親子で似るにも程があるんじゃねェのか?」


おれは微笑を浮かべながら墓に語り掛ける。瞬間 に秋奈が微笑んだ、そんな気がした。
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