死にたくない

□過去
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「……だ…治療法は………」


…声…?


(ピッピッピッ…)


「……まァ要するに…」


機会音…?


「…お姉ちゃん………」


愛桜!?


「…ん……?」


「お姉ちゃん!!」


何で 愛桜が…?


ここは、どこ…?


「愛桜、ここは……?」


真っ白な布団、腕にはいくつもの点滴。


「病院だよ!お姉ちゃん病院に一人で来ようとして、途中で倒れて……」


病院……あ、確かに少しだけ覚えてるかも…


低い声が聞こえて……抱かれて…そこからは覚えてないけど…


「病院か!……良かった…これで風邪が治る……今回の風邪やたらキツいのよ。なんだろ」


一人で明るく取り繕るが、誰も笑わない


「…?どうしたの?」


すると今まで黙っていた一人の長身の男がこちらへ寄ってきて言った


「よく聞け。それは風邪じゃねェ、癌だ」


聞かされた時、時間がやたら遅く進んだ気がした


愛桜の方を見ると、下を向いて黙っている


「…が……ん…?」


きっと今のは聞き間違いだ、よね


それか風邪って言おうとして癌って言ったんだ


そもそもこの人は誰!?


「てか、あなた誰なんですか! ?こんなにいっぱい点滴打って大丈夫なんですか!?」


この人は医者なんかじゃない。


目付き悪いし、刺青彫ってるし、ピアスも開けてるし……


「おれは医者だ。点滴がそんなに嫌なら抜いてやる。すぐに死ぬだろうよ」


…!?この人怖い……


「医者なら!何故癌と言うのですか?これは風邪だと「癌は癌だ」


頭が真っ白になる


やっぱり、癌なの……?


「治療法はあるんですよね。症状は今日出たので、まだ大丈夫ですよね?」


心臓がドクンドクンと激しい鼓動をたてているのが分かる


同時に冷や汗が全身を伝った


「…悪ィが、お前の状況は手遅れだ」


「手……遅れ………」


手遅れという言葉に絶望し、わたしは途端に生きる希望をなくした


「そっか…わたし…死ぬの……?」


不思議と死ぬ事に恐れはなかった


だが、どこか心の奥が空っぽだった


空虚とはこの事だろうか


「まァ…こっちも最善は尽くす。」


最善を尽くす、なんて言われても手遅れと言われてしまえばなんの保証もない


「…お母さん、お父さん……この事聞いたらどう思うかな…桜菜も……」


【わたしは癌に侵されている】


この事実を家族や大切な友達にどうやって伝えれば良いのだろう


わたしの目の前にいるこの医者はなんの躊躇もなく、それも本人に癌だと告げた


軽く言えば良いの…?「癌だって!」と。


あと何年、いや何ヶ月……もしかしたら明日かもしれない。何時間後かもしれない。


わたしはどれくらい生きられるの?


それを医者は悟ったのか、わたしのカルテを眺めながら告げた。


「余命は半年だ」
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