リヴァエレ本

□叶わぬ 恋をしている 1<後> リヴァエレ
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いつ命を落とすか知れず、戦いのあとは気が高ぶる。
そういう場では新兵が性行為を強要されることが少なくない。
兵団とはそういうところだ。
お前は特殊だが、だからといってその標的にならないとも限らない。
巨人を屈服させたい歪んだ欲求や物珍しさからの犯行もあるだろうからな。

初めての夜にそう語って聞かせ、俺はエレンに契約を取り付けた。
だが俺がエレンを囲っていると示す「ふり」だけのそれではどうやら色が足りなかったらしく、思案の末、今や犯していないのは唇と穴だけという有様だった。
その壁もまた一つ、今夜崩れる。

暗黙の了解だったそれを崩して、本当にいいのか。
決断の前に到着を告げられ、俺は小さく舌打ちした。
「入れ」





叶わぬ恋をしている





そもそもの経緯はこうだ。
今日の午後会議があり、エレンを連れ立って本部に入った際、同期に会えば気晴らしくらいにはなるだろうと、早めに出て昼は本部の食堂でとることにした。
エレンはクソガキ共に囲まれ、昼を済ませた後もそいつらとの話が尽きそうになかったのと、会議までまだ時間があったのとで少し席を外すかと散策することにした。

戻ってみるとエレンがいない。
嫌な予感がしてアタリをつけてみれば、エレンは奥まった一室で猿轡をかまされ、机に押し付けられる形で5,6人の男たちに押さえ込まれていた。

クソメガネの言を借りると、俺が熟れさせた果実を食わずに放置してたせいだそうだ。
牽制のつもりで契約したはずが、夜も昼もなく欲求不満な面でウロウロされるとは何てざまだ。
近づく輩を削いで回っていってもいいが、目の届かないところで何かあっても困る。


長椅子に待機しているエレンに目を走らせ、小さくため息をつく。
こいつに言って聞かせて解決できるなら何の問題もないが、それほど器用な奴でもないだろう。
今も隣に座れば熱い視線を送られ、視線をやれば目をそらされる。
そのままじわじわと首まで赤くなるような始末だ。

…何でそんなにわかりやすいんだてめえ。

もうお前の中で憧れの域を超えていることも、俺の意図に気づいていることも、その上で下手なりに想いを隠そうとしていることも、俺は理解している。
俺はこいつに同じ想いは返してやれない。
抱くことでむやみに期待させて、こいつを傷つけたくはなかった。


どこまで赤くなるんだろうなあこいつは、と酒を呑みつつ眺めていると、ふと首元に服の隙間から覗く赤い跡が目についた。
俺はそんなところにつけた覚えはない。

そうするとあれか。
昼の、押し倒されていた姿が浮かぶ。

請われて股間を踏みつけたときの、俺の逸物を美味そうにしゃぶるときの、恍惚とした顔。
ずいぶん前に尻を差し出してきたときの泣きそうな顔。
その時言われた、「へいちょう」

まさに今、耳元で言われた気がした。
──俺はこいつを、誰かにくれてやるために育てたわけじゃねえ。



「抱かせろ」

ひどく狂暴な気分だった。
ごちゃごちゃうるせえエレンを黙らせてベッドに放り投げる。
てめえは知らねえだろうが、俺は薄暗い地下街にいた名残りか人より夜目が利く。

暗い場所では安心しきって本音を晒すようだからな。
全部暴いてやるよ。
普段しまい込んでいやがる奥底の本音も。
なれた手つきで広げられる、ぬらぬら濡れて簡単にイきやがるこのエロい穴が、本当に他の男を咥えこんでいないのかもな。


先走りを塗り付けて穴にぶち込もうとして顔を見やると、エレンが静かに泣いているのが見えた。
いつものようにしゃくりあげるでもなく、自分が泣いていることすらわかっていない様子に、一気に頭の中が冷えた。

優しくする、そう伝えて目尻にキスをする。
間近で金目と向き合い、先の自分の行動を悔いた。


熱く俺を見るその目が、覆いを取っ払った目が、何を望んでいるのかわからないはずがない。
唇が俺を誘うように動く。
視線が自然とそちらを向いてしまう。
吐息だけで俺を呼ぶその唇にかみつきたくなるのを寸前でこらえ、その目を隠すように瞼に唇を落とした。
唇を避けて触れるたびに、エレンの顔が苦しそうに歪む。


優しくする、だがそれだけは叶えてやれなかった。
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