エレリ本

□かの姫の初夜物語 エレリ♀
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昨晩は腕の中で身を固くするリヴァイさんをあやしながら二人でまんじりとして過ごし、明け方近くなってからようやく眠りについた。
婚儀の翌日ということもあってその日は昼までお休みをいただいており、目が覚めてから抜け出そうとするリヴァイさんを腕の中に閉じ込めてまどろむ。

午後から俺はこの国のしきたりや政務を学ぶ講義が、リヴァイさんは公務が入っているはずで、次に会えるのは夜になってからだ。
それまでもう少しひっついていたかった。



ちうちうと首筋に口づけを落としながら、今夜のお伺いを立てていく。
「房事の講義は今夜から始めましょう。実際にするのはあなたの心が決まってからでけっこうですから、代わりに何か対価を頂けるとうれしいです」
ゲームに勝ったらで構いませんからと付け足すと、頬を赤く染めたリヴァイさんがどうにか肯首してくれた。

「ゲームって、何するつもりだ?」
「うーん…お互いの国に共通してあるものだとすぐにできるんですけどね…」
いくつか名を挙げてみるが、近いようなものはあってもルールが少し異なっていたりと即応は難しいように思えた。

「では、ひとまず私の国に伝わる簡単な手遊びにしましょうか。手の形をそれぞれ石、鋏、布になぞらえて、出した手で勝ち負けを決めるのです」
自分とリヴァイさんの手を使い、手の形と勝ち負け、その由来を簡単に説明していく。

「ただの運比べじゃないか」
なんだつまらん、と興味を失うリヴァイさんに笑みを返す。
「そうでもありませんよ。駆け引きを加えてみたりだとか、楽しみ方はいろいろあります。たとえば、そうですね」


「…リヴァイさん、俺は今から布を出します。この両の手のようにあなたの石をくるんで、暖めてあげますね」
腕に少し力を込めて引き寄せ、ほとんど吐息だけで、耳元で囁く。
耳まで赤くなって一気にこわばるリヴァイさんに、間髪をおかずに掛け声をかけた。

「じゃあしましょう、せーの」
出された手はどちらも鋏で、不遜な空気を伴ってリヴァイさんが振り返る。

「おいてめえ今布って…」
「だから、駆け引きですよ。こうすればあなた石は絶対に出さないでしょう?布以外を出せば、負けはありませんからね」
にっこりと笑ってそう告げれば、とりあえずは納得してもらえた。
素直でかわいい人だ。


「次はちゃんと宣言通りに布を出しますよ。俺はあなたに誠実でいたいですから、今度こそ本当です」
そう言って、今度はわざと考える時間を与える。

2度目の掛け声に並んだ手は、リヴァイさんが石、俺は宣言通りの布。

「信じてくださって、ありがとうございます」
うれしさのあまり額にキスを落とすと、真っ赤になったリヴァイさんが慌てて反論を始めた。
「違う!これは裏の裏を読んで…っ」
「裏の裏を読んで、俺が誠実さをもって宣言通りに出すと、そう思われたんですよね?」
「違うって…言ってんだろうが…」

弱々しくなっていく反発に、かわいくてたまらなくなってぎゅうぎゅうに抱きしめる。
このまま二人で過ごしていたかったけれど、楽しい時間はすぐに過ぎ去ってしまうもので。
一つお願いを聞いてくださいねと約束をして腕をほどき、自室へと戻った。



その夜。
講義も終えてあとは褥を共にする時間になり、俺は二人にあつらえられた部屋の前の廊下にいた。
壁にもたれ、抜け出してくるであろうリヴァイさんが現れるのを待つ。
それほど時間もたたないうちに、誰もいないはずの隣の部屋のドアノブが回り、そおっと扉が開かれた。
音を立てずにそちらへと向かい、扉を大きく引き開ける。

「…っ!!」
バランスを崩して倒れそうになる体を抱き留め、今夜も情熱的ですねと告げれば、腕の中のかわいい人は憂鬱そうな空気をにじませて固まった。

「うわっ!おいこらてめえっ!」
その体をふわりと抱き上げ、もといた部屋に戻る。
ベランダに括られたシーツの残骸をみとめて呆れてしまう。
もうこんな危ないことはしないでくださいねと顔をすり寄せれば、とたんに頬を染め逃げを打ち始めた。
「おい…っ」
「…触られるのも、お嫌ですか?」
静かに問えば、その美しい柳眉を下げて口ごもる。
小さなその唇でもごもごと語られた内容は、急にされると困るというものだった。

「では、許しを。…唇に触れても?」
何度か瞬いたあと揺れ動く瞳が閉じられ、しばらくして再び開く。
するなら早くしろと声がかかるまでじっと待った。
数回ついばんだのち、会わなかった時間を補うように深く口づける。
歯列を割って舌を吸い上げれば、昨夜で心得たらしいリヴァイさんがそれに絡めはじめた。
んくんくと鼻にかかった甘い声が漏れ、抱き上げたままの腰がわずかに揺れる。
ベッドの端にそっと横たえてひとしきり貪ったあと、ようやく唇を離した。



「…っクソなげえっ」
「すみません、あまりにも気持ちよくて」
赤い顔で息を乱すかわいらしいその様子を眺めているだけでも幸せになるけれど、きっと怒ってしまうだろうから。

「では、講義を始めましょうか」
予備のシーツをばさりと広げ、その上にあおむけに横たわった。
名を呼べば、おずおずとだがやってくる。
「俺をまたいで、俺の足の付け根に腰を落としてください」
「こう、か…?」

お互いに夜着を着たままではあるが、薄く柔らかな布地では、俺のふくらみもリヴァイさんの窪みもしっかりと感じ取れてしまう。
俺の昂ぶりに触れるのを恐れたのか、リヴァイさんは軽く腰を浮かせたまま跨った。

「そのまま、腰を持ち上げたり下ろしたりしていただけますか」
勝手がつかめず、いろいろなところに手をついては触れるぎりぎりで腰を上下させていたリヴァイさんだったが、ふと触れた際に俺が眉をしかめたのを見てとり、すり、と軽く腰を擦りつけた。
「…っ」
思わず息をつめた俺の反応に気を良くしたのか、嬉しそうに腰を上下させはじめた。
下ろす際にくりっと腰を回すなど工夫を加えながら、流し目でどうだ、と問うてくる。

「とても気持ちがいいです。…次は、腰を下ろしたまま前後に揺すってみてください」
再びあれこれ思案した結果、両手を前後で支えるか、俺の腹に当てるかがしっくりくるようだった。
始めは覚束なかったその動きも、リヴァイさん自身が気持ちよくなってきたのか、速く淫らなものになっていく。
蠱惑的な腰の動きとほどよい摩擦の刺激に、俺の方もそろそろヤバい。
その部分からは、どちらとも知れない溢れた粘液がくちくちと音を立てていた。


「お上手です、…そのまま上体を倒して、俺に覆いかぶさってくれますか?」
言われるままに身をかがめるリヴァイさんの、熱い吐息が肌にかかる。

「…っは、…腰、…止まんね……」
ちょうど陰核を擦る姿勢になったのだろう、さっきよりも切羽詰まった表情をしている。
「イって、いいですよ?」
「っふ、…?」
淫欲を浮かべ、うっすらと膜を張った瞳が俺を映す。
そのとたん堪らなくなり、抱きしめて唇を奪った。
舌を絡めて貪りながら、下から腰を突き上げる。
「ふぅ、んっ!んんーっ!」
最後には腰を動かす余裕もなくなったリヴァイさんが俺に揺すられ体を痙攣させたのち、くったりとしなだれかかった。



「…気持ちよかったですか?」
「……よく、わかんね……からだ、あちぃ……」
はじめてなのにお上手でしたよと声をかければ、ぼんやりした頭にも届いたのかむずがゆそうに口元を緩めた。

「次は、対価を頂きますね」
「…んぁ」
耳元で吐息とともに囁くと小さな喘ぎがこぼれた。
耳殻を一舐めすると逃げをうつので、反対の耳に指を突っ込み阻止をする。
「あ…ふあ、あ…」
くにくにと舌と指で両側の耳を弄れば、緩んだ口元からかわいい声が漏れた。

リヴァイさんがいやいやするのを、対価ですよ、俺を苛めて楽しかったでしょう?と囁いて押しとどめる。
快感が腰に来たのか再びゆるゆると擦りつけるのを揶揄し、下からも突いてあげると嬌声が一際高くなった。

「や、ぁっ!…こえ…っ」
「声が気になるのでしたら、どうぞこちらを」
そう言ってちうちうと頬に軽くキスを送ると、リヴァイさんの方から唇を向けてきた。
口を塞いだことで安堵したのか動きが次第に激しくなっていく。
細腰に腕を回し、俺の方も腰を押しつけていった。


「んぅっ、ふぅ…っ、むぅ…っん!」
ガクガクと身を揺らしながらリヴァイさんがイったのを感じ取り、今度こそ俺も果てた。
擬似ではあるけれど、愛しい人を腕に抱いて一緒に迎える絶頂は、言い知れぬほどの悦びを感じる。

力いっぱい抱きしめるが、めずらしく反発がない。
「…リヴァイさん?」
静かすぎる相手をいぶかしんで声をかけるが、その人は腕の中でくったりしていた。
どうやら慣れない快感に気をやってしまったらしい。

明日はひどいんだろうな、もう触らせてくれないかな。
苦笑まじりに寝顔を見つめ、額にちうと柔らかなキスを落とした。


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