リヴァエレ本

□叶わぬ 恋をしている 1<前> リヴァエレ
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触れられるどこもかしこも熱かった。
これまで挿入がなかっただけで、お互いの気持ちよくなる箇所も方法も熟知されてるけど、それだけが理由でないことは明らかだ。

兵長に抱かれる。
抱いてもらえる。
それが何よりの理由だった。


ベッドに押し倒され寝間着をはぎ取られ、顔を隠していた両手をからめ取られて胸元に口づけられる。
ゆっくりと舌を這わせて、乳首の周りのしわを伸ばすように舐められる。
右手はからめられたまま、左手は腕の柔らかい部分を確かめるようにたどっていく。
時折膝で、足の付け根の際をぐいと押された。

本当にこの人は焦らすのがうまい。暴くのも。
肝心なところは少しも触れられていないのに、乳首もあそこもガチガチに勃っていた。

「どうしたエレン。腰が揺れてるぞ」
「…ッすみ、ませ」
「どこか触ってほしいところがあるのか」
全部です、キスをして、体中余すところなくなぶって、俺の穴に兵長の熱くてかたいのをぶちこんでください。
そう言いたいのをぐっとこらえて目を閉じる。

欲しがるな、期待するな、煩わせるな。


「兵長が、気持ちよくなるようにしてください」
「…そうか」
「あの、兵長のを勃たせた方がよろしいでしょうか」
「必要ない」
「では…その、穴を……広げますので、少しお待ちください」

寝室に入った途端に押し倒されて翻弄されてしまったから、大事なことを忘れていた。
抱いてもらうための準備に、兵長の手を煩わせる必要はない。
「自分でしたことがあるのか」

──ある。
兵長に抱かれるのを想像して、何度かそこで自分を慰めたことも。


「…以前、同期にやり方を教わりました」
「ほお…実地でか」
「いえ、口頭です」
「………してみせろ」



見ないでほしいという願いは一蹴された。
兵長は長期戦よろしく俺の脚の間に腰を据え、じっと見下ろしている。
枕を腰の下に敷き、震えそうな手で下着を下ろし、人差し指を口に含むと、濡れた指の腹で穴の周りをなじませた。

暗いから、月明かりも逆光になっているから、よくは見えないと思う。
さっき兵長に舐められたのを思い起こして、同じ動きになるようにいじっている、なんてことも。

少しほぐれてきたので、今度は先走りを指になじませてゆっくりと挿入した。
息を止めないように、入れては出し、乾いてきたら先走りを足す。
人差し指が十分入るようになったら、今度は中指を添えて。
気持ちがよくなる場所はあえてずらす。
下手に慣れてるなんて思われないように。

単調な作業の間、俺はずっと兵長を見ていた。
兵長はじっとそこを眺めていたけれど、3本目が根元まで入ったところでついと目があった。
「は…ぁッ」
兵長の、飢えた獣みたいな欲に濡れた目を見て、軽くドライでイッた。
とたんに穴がしまって、力を抜くために短い呼吸を繰り返す。
バレてなければいい。


「〰〰〰ッ、あの、もうそろそろいいと思うので、どうぞ…」
なるべく刺激しないように指をそっと引き抜き、ひざの裏を抱える。

色気も何もない、でもこの先どうしていいかなんて知らない。
兵長は何も言わずにそれを取り出すと、俺の穴にあてがった。
少し探った後、そこに触れる。
泣きそうだった。


「エレン。泣いてるのか」
泣いてません。
「いやなのか」
違います、嫌なはずないです。

唇が震えてうまく声が出せず、首を振って答えた。
「そうか、なるべく優しくする」
目元からこぼれた涙を唇ですくわれてはじめて、泣いているんだと知った。

そのまま唇にもキスがもらえれば、涙は止まるかもしれません。
期待するな、そう頭の隅が囁くのに、キスがほしいと、目で訴えてしまう。
声が出ず、へいちょうと唇だけでつぶやいた。



兵長は、視界を遮るように瞼にキスを落とすと、頬を経て首筋、鎖骨へと下がっていった。
さっき焦らされた乳首や股間もたっぷりといじってくれたし、俺が痛くないように十分に穴も広げて、俺の気もちいいところもちゃんと見つけて、中だけでイケるように揺さぶってくれた。

それでも、最後まで唇へのキスはなかった。



───もう十分です兵長、あなたはいつも優しい。
兵長が俺を抱こうと思った理由も、本当はわかっていた。
過度な期待はさせず、立場を分からせた上で、牽制という目的を果たしている。
俺が分をわきまえなかっただけだ。
だから謝らないでください。

涙ももうじき止まりますから。
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