リヴァエレ本

□クマイさんのコンビニ「好きなのを選べ」 リヴァエレ エレン総受け
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その日その時間、そこを通りがかったのは本当に偶然だった。
飲み会の帰り、はしゃぎすぎて終電を逃した俺は、酔い覚ましもかねて歩いていたのだ。
4駅分とはいえ寒い中長時間歩くのはさすがにいやで、ケータイの地図片手に初めて通る道すがら、人の群がる得体のしれないコンビニに出くわした。
「??!!!…なんだ、ありゃあ……」
素通りしかけて振り返り、思わず数歩バックした。
煌々と照らされた入り口付近を群衆の人影で切り取られている。
その異様な光景に怖いもの見たさで恐る恐る近づけば、人波の奥から小さな嬌声が聞こえてきた。
全員が凝視している先であることを考えると、奥で何が行われているのかは明白だ。
うわ…っすご!どんなリア充…もとい変態だよ、と興味本位で覗き込み、固まった。

そこにいたのは、俺の通うゼミ生の同期であり、普段から衝突の絶えないくっそ生意気なリア充であり、相手が教授だろうが気に入らなければ食って掛かる死に急ぎ野郎だった。
そいつが、なぜか、昔有名だった動くクマのぬいぐるみにケツを掘られて喘いでいる。

……は?…え……??
あいつそういう趣味の人??
しかもこんな衆人環視のもとで??
相手ぬいぐるみとか、ちょっとなくね?
え、俺…まだ酔ってんの?

頬をつねってみるが痛い。
…やべえこれ現実かー。
あまりにも混乱すると人の頭は思考を停止するらしい。
「や、あぁっ!クマイさ…もっイく、だめ、だめっ!あ、やあっはあああんッ」
鈍い頭で立ちつくしているうちに、そいつはフィニッシュを迎えたようだった。
聞いたこともないような艶のある声を周囲に響かせて身を震わせる。
涙と快感に濡れてとろりとした目をこちらに向けるが、その実何も映していないようなぶっ飛んだ表情をしている。

知っている奴の濡れ場、しかもこんな特殊な状況にオイオイと思うものの、弱みを握ったような気がしてまあ気分は悪くない。
客も入り始めたようなので、冷やかしてやるかと俺も店内に足を向けた。


「いらっしゃいま…っ!!!」
気だるい表情で迎えた客層に俺がいることを認めた途端、そいつのでかい目がさらに見開かれ、みるみる涙がたまって真っ赤な顔を俯かせた。
「なんだ?エレン、知り合いか」
「ゼミの…同期で」
「…ほう…」
カウンターにちょこんと腰かけたもふもふのクマがエレンと言葉を交わし、俺に視線をよこす。
「…ひッ!」
テレビで見てた時も目つき悪いなとは思っていたが、間近でにらまれると怖えなんてもんじゃねえ。
ぽってりとしたフォルムのぬいぐるみごときにアホかと悔しい気にもなるが、なぜだか俺の体は蛇に睨まれた蛙みたいに硬直している。

「てめえ…冷やかしなら帰れ。外で面白半分にこいつを貶めるようなら玉をつぶす」
どすの利いた声で凄まれ、手にしていたボールペンを粉砕されて縮み上がる。
「き、客です!」
思わず叫ぶと、カウンター越しからエレンが「さっさと帰れ!」と噛みついてきた。
「エレン、客だ」
静かな制止が横から入り、それまで毒づいていたエレンが一気にしおらしくなる。
あのエレンがだ。
ふだんあまり見ることのないその珍しい態度に気を良くした俺は、「ま、そういうことなんで」と肩をそびやかせその場を離れた。


そうして店内を物色しようと辺りを見回したところで、棚のむこうにずらりと並んだレジ待ちの列が目についた。
「な、んだあ…??」
俺のように店内を物色する者もいるにはいるのだが、ざっと10人以上は列をなしている。
普通の店なら対応する店員を増やすところを、レジはエレンしかないし、クマはカウンターに座っているだけで働く気配もない。
客もその様子に目くじら立てるどころか、なんでかウキウキしてるように見えるのは…俺の目がおかしくなったわけじゃねえはずだ。
手近な棚に近づき、物色するふりをしながら様子を伺えば、ガタイのいい上品そうなリーマンが山盛りのカゴをカウンターに乗せたところだった。
それを見やったクマがすっと何かを取り出し、カウンター上についと滑らせる。
遠目にはわかりにくいが、カードの暗証番号を入力させる機械みたいなやつだ。
リーマンがその機械に手を伸ばすと、それまで目を見張るスピードでスキャンと袋詰めをしていたエレンの体が目に見えてびくびくと震えだした。

「ふぁ…っ!あ、や…あぁ…クマイさ…っ」
「…これはいいものを引き当てたね。イったばかりの体には、少々きつくないかい?」
リーマンはカウンターに乗り出すようにして低い声でエレンの耳元に告げる。
エレンはちらりと俺を見やると、目を伏せて返した。
「別…にこんなの…たいした、ことじゃ…」
「そう、頼もしいね」
薄く笑ってその精悍な顔が離れていくのだが、これはどう見積もってもセクハラ以外の何物でもない。
不規則にびくついたり切なげな表情を晒していることを思うと、さっきの機械はバイブか何かのスイッチなのか?
クマも他の客も何も言わずにいるってことは、これがこの店の日常ってことか?
しょっぱなの光景と言い、冗談きついぜ…

「く…………ん、はぁ…っ、……………んぅっ」
それでも、時折堪え切れないかのように手を止め悶える姿と漏れるか細い声は、こっちまでおかしな気分にさせてくる。
ちらちらと送っていた俺の視線を確認しエレンの顔がかあっと赤くなったのを見て、リーマンはエレンを俺から隠すように間に立った。
「ん…っ、く……ぁっやぁ…っ」
「腰が揺れ始めてるよ。やらしいね」
「腰が動くたびにくちゅくちゅ聞こえるんだけど、もう下着が濡れているのかい?」
「…そんなものより、熱くて太い肉棒が欲しくはならない?」
姿は見えずとも声は聞こえ、その様子を勝手に脳内再生してしまう。
視線は棚を向いていても、押し殺したような声や吐息に耳をそばだてている自分に嫌気がさした。

「…っ、黙れよ、変態野郎…ッ」
「いい目だね。でもそんなこと言っていいのかな?さっき同じ商品を2回通したのを、せっかく見逃してあげようとしてたのに」
「え、うそ…待って、クマイさんっ!んあっ、や、あああっ」
突然大きくなる喘ぎ声に顔を上げると、カウンターに縋るようにして崩れたエレンが見えた。
「いやぁあっ!!あ、いく、いくっ…ひあっ!」
身も世もなく悶えていた体が突如止まり、ひくひくとまるで快感の余韻をかき集めるように腰が揺らめく。
「あ、あっ……ああ…クマイさ…」
ねだるようにクマを見つめるその瞳には、燻ったままの熱が見てとれた。
「…ギリギリで寸止め?君もなかなか鬼畜だねえ」
「当然だ、毎回イってたんじゃ仕事にならねえだろう。ところで会計だが、2万超えるな。来月か再来月、どっちだ」
傍らで置物と化していたクマがおもむろに声をかけたのを聞き取り、視線を送る。
「もちろん、来月で頼むよ」
なんのことかよくわからず様子をうかがっていると、クマが冊子のようなものを渡しているのが見えた。
2万超えると何かあんのか?
つーかコンビニで2万ってありえねえだろと思うのに、次の客が一月分のレシートの束をクマに手渡して来月と言うのを聞き、少し気が遠くなった。
そこそこイケメンで俺と同じくらいの歳っぽいのに、何でコンビニに貢いでんだよ…

しかもその客が機械に手を伸ばした途端、エプロンの胸元部分が傍目から見てわかるほどうねうねと動き出した。
…!!???
いくつバイブ仕込まれてんだてめええええ!!
そこいじられて切なそうな顔してんじゃねえよ!
客もガン見じゃねえか、マジ怖えな!
思わずカウンターを凝視していると、頭上にすっと影が落ちる。
ふり仰げば、先ほど会計を終えたばかりのリーマンだった。
「いけないね。あれは会計中の客の特権みたいなものだよ。盗み見はマナー違反だ」
「マナー…、すか」
笑顔なのにガタイがいいのと底知れない何かが感じられて思わず口ごもる。
「品物を決めたら列に並ぶといい。みんな親切だからいろいろ教えてくれるよ」
暗にさっさと並べと言われたようなもので、俺は何となく腑に落ちないものを感じながら手近にあった漫画雑誌片手に列に並んだ。

最後尾にはきれい目のお姉さんが並んでいて、俺はこそっと気になったことを聞いてみた。
「あの、すみません…来月とか再来月とか何なんですか」
「ああ、エッチの講習会よ」
「……へ?」
きれい目のお姉さんからさらりと出た一言にビビる。
「奇数月が男の子の抱き方講座で、偶数月が女の子の抱き方講座なの。それも実践つき」
…は…?
一瞬何を言われたかわからなかった。
男の抱き方なんて需要があるとは思えないし(この場のエレンに対する空気は理解した
が)、エッチの講習会で身を晒す女がいるとも思えない。
第一あのクマから何を学べというのか…

そういう表情が顔に出ていたのだろう、お姉さんの一つ前にいた天パっぽい人から声がかかる。
「おいおまえ、クマイさんの腰つきを見ただろうが。
 過去にあの方に抱かれた奴は例外なく骨抜きになってる、すごテクの持ち主なんだよ」
俺だって叶うなら抱かれたいぜ、そう呟く天パにお姉さんの肘が入った。
「やめてよ!想像しちゃったじゃないっ」
キモ!まじきも!と青い顔で震えるお姉さん。
天パには大変申し訳ないが、俺もそれには激しく同意だ。
実践してくれるならかわいい子がいい。
「えっと、偶数月の子って、かわいいんですか」
「きれいな黒髪の美少女って話よ」
きれいな…黒髪の…
脳裏によぎるのはミカサだ。
でもまさかあいつがあんなクマに、たとえデモだろうとするだろうか…
エレンの頼みなら、もしかするか?
………………もしミカサだったとしたなら、なんというかすごくアレだがちょっと見てみたい気もする。
ミカサでなかったとしても、そんなすごテクなら学んでおきたいし、黒髪美少女の生AVとかすげえ見たい。
腹は決まった。

ずいぶん待ってようやく俺の番になり、差し出した雑誌にホッとしているエレンの背後を指さした。
「あれも一緒に頼むわ」
背後の棚に並べられているのはポッド型のコーヒーメーカー。
「てきとーに2万いくようにフレーバー追加してくれる?」
にやにやとしたり顔で頼めば、みるみるうちにエレンの顔が険しくなる。
「ジャンてめえ…何考えてやがる」
「安心しろ、てめえの絡みなんぞに興味はねえよ。再来月だ」
「ほう…」
「来んな!ぜってー来んなっ」
今度は青くなり慌ててがなり始めるが、さっきみたいにクマに諌められて押し黙る。
それでもまだ煮え切らない様子のエレンに、まさか本当にミカサだったりするのかと期待で胸が膨らむ。

渋々商品を棚から下ろすエレンの横で、クマが説明を始めた。
「これが当日のパス代わりだ。当日の注意事項やら講習内容はそこに書いてあるが、その日の客層で内容は多少変わる。目を通しとけよ」
渡された冊子をめくると、(たぶん)女と(おそらく)男のあれこれが描かれていたが、壊滅的な域のそれでは何がどうなっているのかさっぱりわからない。
あのもふもふの手でがんばって描いてくれたであろうことを思えば…って思えねーよ!
わかるのはパソ打ちされた注意事項くらいだ。
何回目なのか知らねえけど、誰も何も言わなかったのかよ!とクマに向き直ると、据わった目をした凶悪面がそこにいた。
…何も言えなかった。

そのクマから、好きなのを押せ、と機械を差し出される。
機械には3つボタンがあり、俺は真ん中の赤を押した。
その途端、硬い表情で棚から下ろした商品をスキャンしていたエレンの体が大きく傾いた。
「──ッ!!ふあ、あ…っ」
スキャナーをぎゅうと握りしめ、まるで猫のように腰を突き出し切なげに眉をひそめる。
「ジャ…ン、見るな…っ」
いつも生意気だった顔は快楽と羞恥に歪み、視線を避けるように伏せられた目元には涙がにじんでいた。
「ぅ……くぅ…、…ッ、ふ」
波があるのか一定の間隔で体を逸らし、堪え切れない声を漏らす。
次第にその間隔が狭まり、腰がゆすゆすと揺れ始めた。
「んふ…、ハ、…ああ…」
目を伏せ快感を探るように揺れる腰の動きは、男のそれでなく、AVなどで見るようなセックスに慣れた女の動きだった。
俺の選んだバイブは、今こいつのどこを攻めたててるんだ。
思わずごくりと喉を鳴らしてしまい、その音を聞きつけたのか耳元まで赤く染めるとエレンはいっそう激しく腰を揺らめかせた。
声も徐々に大きく淫らになっていく。
『あれは会計中の客の特権みたいなものだよ』
リーマンの言葉が脳裏によぎる。
なるほど、その意味がよくわかった。

「あ、あっ…も、イくっイきたい…っクマイさん、クマイさ…っ!」
両手で崩れ落ちそうな体を支えながら、くにくに腰を揺らして解放をねだる。
服越しに、あふれた先走りかすでに吐き出された精液がぬちぬちと音を立てた。
「いいぞ。…ただ、今てめえの前には誰がいる」
許しを得て一瞬緩んだエレンの顔がこわばる。
そろりと上げられた視線が、痴態にくぎづけになっていた俺のそれと絡んだ。
「ふあ…あ、見るな、みるなあ…っ」
視線を遮るように自分の顔を手で覆うが、腰の動きを止めることはできないようだった。
「あ、いやだ…っあ、あ、あっ!──んああぁああっ」
びくびくと体を震わせ、カウンターにしなだれかかる。

少しの間くったりと身を預けていたが、荒い息もまだ整わないうちに身を起こすと、エレンは覚束ない手つきで再びレジ作業を再開した。
傍らのクマから声がかかる。
「再来月でいいんだな?」
「…ああ」
返事はひどくかすれて聞こえた。



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