ギフト置き場

□このあと無茶苦茶○○した2
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ええと…やったことありますか?」
店のおっちゃんから2人分の銃とコルクを受け取り尋ねる。

「ねーよ」
若干不機嫌なのはデフォルト…ではないんだろうきっとたぶん。


てめえはどうなんだと聞かれて、今生ではと答えた。
「おい、俺すげえ不利じゃねえか」
「物が違いますし、あの頃のようにはいきませんよ。それでも五分五分とは言い難いでしょうから、助言はします」
そう言って、がぶがぶバナナに齧りつき手を空けたリヴァイさんへと銃を渡した。

「で、どれ狙うんだ。数で勝負か?」
そうですねと棚に並ぶ景品を眺めた俺は、あるものを目にして時が止まる。
「……っっ!あれです!!」
まっすぐ指さした先は、兵長の限定フィギュアだった。


「……てめえ…俺にケンカ売ってんのか」
「そんなことはないです! あのフィギュアは少数限定制作だからって、俺の手に渡ってこなかったんですよ。こんな射的の景品にされること自体ありえないですが、みすみす誰かの手に渡すなんてもっと許せませんっ!!」

思わずカッと目を見開き力説すると、リヴァイさんもさすがにたじろいだのか。
機嫌が急降下していたはずなのにほんのり赤くなって、仕方ねえなと承諾してくれた。
互いに一射ずつ勝負することになり、じゃんけんで先攻を頂く。


まずは一発。
昔の記憶を辿って銃を構え、呼吸を整える。
銃の精度を確認するつもりで狙いを定め、引き金を引いた。
コルクは大きく外れ、あらぬ方に飛んでいく。
反動の割には威力は乏しく、精度も今ひとつといったところか。

さてどうする、と思案にふけっているところに声がかかり、そちらを振り向く。
傍らのリヴァイさんが浴衣の袖を肘までまくり上げ、俺の構えをまねてこうか?と尋ねた。
筋張った腕が露出し、渋い浴衣と相まって鋭さを際立て。
なによりその構える姿が………むちゃくちゃかっこいい……っ



「あ、えと…けっこう狙いが外れますので、なるべく標的に近づいた方がいいです。反動は来ますが、片手持ちでもいけるかと…」
ばくばく跳ねる心臓を抑えながら何とか返すと、リヴァイさんはそれじゃこうだな、と構えなおした。
どこにも力の入っていない姿勢でひたりと照準を合わせるのが凛としていて最高にヤバい。

「チッ、外したか。おいエレン次てめえの番だ」
「ふあっ、はいっ!」
見惚れていて準備を忘れていた。
慌ててコルクを詰め、集中しろっと念じて放つも、動揺を抑えきれずに外してしまう。
「なんだ、おまえの腕も大したことねえな」
誰のせいですかと口をとがらせて振り返れば、リヴァイさんは銃を片手に不敵な笑みを浮かべていた。

〰〰〰だからっ!
似合いすぎて本当に心臓に悪いんだってば。
このままじゃ次もろくに打てそうにない。
もはや動揺を誘う作戦なのかと問いただしたい気にさえなる。

そんな俺をよそに、リヴァイさんが再び銃を構えていく。
その姿はさっきよりさらに様になってるし研ぎ澄まされ張りつめた空気が息苦しいしでもうとにかく心臓の音がうるさい。
一応人前なのでふにゃふにゃになりそうな顔は必死に引き締めたが、視線の帯びる熱だけはどうしようもなかった。



「…レン…おいエレン、取れたぞ」
声をかけられているのに気づけず、頭に何かを乗せられてようやく、ぽーっとなっていたことに気づく。
「え、あ、はい」
フィギュアを受け取って見つめる。
「何だ。嬉しいとか悔しいとかないのか」

間違いなく待ち望んだあの兵長限定版だ。
経験者のくせに勝負にも負けた。
「そりゃありますけど……」
脳内にへばりついた残像がすごすぎて全部持っていかれてる。

「……リヴァイさんの浴衣が似合いすぎるのが悪いんですよ…」
「そうか。ありがたいんだがそのポーズで言うのは勘弁してくれ」
フィギュアで顔を隠していたのを咎められ、まだ赤みの残る頬をそのままにそうっと手を下ろした。


「そろそろ花火始まるな。移動するか」
リヴァイさんがおっちゃんに袋を頼んでくれ、袋におさめられたフィギュアを抱えてこくりと頷く。
先を行くリヴァイさんに着いていくのだが、その後姿すらかっこいい。
刈上げが浴衣に合うな。
筋肉はあるのに着やせするせいか、バランスが合うんだよなあ…
とまあそんなことをつらつら考えていたら、肩越しに振り返られた。

「おい、視線がうるせえ」
「だってすげえ似合ってて…それ、誰かに着付けてもらったんですか?」
「自分でやった」
「えっすごい…俺母さんに頼んだのに」
さすがリヴァイさんと意気込んだら、気づけよと返された。

「てめえが着崩れるようなことがあっても、その場で直せるようにだ。家までもたねえかもしれないしな」
こそりと耳打ちされた内容に、意図を察して赤くなる。
今の俺はきっと、耳から首元まで真っ赤だ。
耳打ちされた側に甘い痺れが残っていて、俺はその部分をさすさすと擦った。



穴場だと案内された場所は、会場から少し離れた森林公園だった。
人通りが全くないわけではないが、ベンチに座って花火を堪能できるらしい。
離れていると言っても見える花火はけっこうでかいし、音も腹に響くほどだ。

色とりどりに打ち上げられる花火を目で追っていると、傍らからきれいだなと声がかかった。
花火はきれいだけど、その言葉には同意しかねる。

「…花火、見てくださいよ」
「見てるだろ」
見てるって…どう見ても俺をじゃないか。
横目で窺うまでもなく、リヴァイさんの視線の先は俺だった。
隣から焼けつくような視線を感じてそちらを向くことができない。

「てめえだって見てねえじゃねえか」
袖口からついと手の甲を撫でられ、びくりと震える。
「り、リヴァ…」
「そういやまだ、報酬もらってねえよな」
そのままつつと袖の奥まで撫で上げられ、俺はとうとう俯いてしまった。


「…ほんと、…勘弁してください…」
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