企画小説置き場

□素直になれないおとなたちの<前>
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ひどくぼんやりとした頭でも、ケツの穴がひくついているのがわかる。
レンズの舐めるような視線を強く感じる。
陰茎から垂れた精液がとろとろと滴り、穴のふちを流れ落ちていく。

ケツを弄られて、イった。
その事実を自分の体がこれでもかと突きつけてきて泣きそうになる。
でもまだ始まったばかりだ。
こんなところで弱音を吐いてはいられなかった。


「エレン、イったばかりで悪いがそこに手をついてくれるかい?」
穏やかな物言いに振り返ると、言葉とは裏腹に固い目をした団長がいた。
俺は崩れ落ちそうな体を叱咤させ、どうにかベッドの端に手を沿えて四つん這いになる。
すぐに指が入れられ、さっきまで弄られていた穴はやすやすとその侵入を許した。
「っう、…く」
挿入自体は浅く、あの部位は避けているようだったが、今度は団長の目の前に尻を突き出す格好になり恥ずかしくて顔が俯いてしまう。
そのまま腕で顔を覆いそうになっていたところを、兵長に顎を掬われ上向かされた。
「おい、顔を下げるんじゃねえ」
「んあ…っ」
少し苦しいくらいの角度に持ち上げられ、兵長と目が合う。
たぶんすごく情けない顔をしていたんだろう、小さく眉をひそめたのち視線を逸らされてしまった。

そんな中、ちょうどケツの穴と玉の裏の間に濡れた感触がして肩越しに後ろを窺う。
兵長に顎を取られたままの自由にならない視界でも、団長が顔をケツの間にうずめていることは容易に知れた。
「え、あ、あ…うそ……」
まるで弄ぶようにその箇所を何度も往復され、穴の周囲を舌先でつつかれる。
ゆるゆると腰を振って逃れようとするのを、ぶれるから動くなと兵長に諌められた。
「き……汚い、です…」
握りしめた拳が、声が震える。
尻穴がきゅうきゅう動いて指を締めつけてしまう。
顔を隠したいのにそれもできない。
内腿がひきつる。
舌の動きは大きくなるばかりで、耐えきれずに固く目を瞑ったところを写真に撮られた。
乾いたシャッター音のあと、指のふちに沿うようにぬちゅりと舌が入ってくる。
「やっ…!だ、だんちょう…っ!…ぁっ!」
抗議の声もむなしく、背後で小さく笑う気配がしただけで止まるそぶりはない。
さすがにこれはと身をよじるが、がっちりと固定されて顔も腰も外せなかった。

指とは異なる動きと感触。
何より人にケツの中を舐められているという事実。
恥ずかしくて頭がぐらぐらする。

いやらしい写真ってこんな風に俺を辱める写真って意味だったのか?
関わるのは団長と兵長だけと聞いていたから、てっきり俺が奉仕する側だと思っていたのに。
なんで俺がケツを舐められているんだ?
これが普通なのか?

痛いのも恥ずかしいのも覚悟はしていたけれど、想定外すぎてどうしていいかわからない。
混乱しているうちに2本目の指が入ってきて、縁をなだめるかのように再び舌で弄られた。
極力動かさないように努めているものの、舌や指が差し込まれるたび、息が吹きかけられるたびに、どうしたって腰が揺れてしまう。
「やあ、ぅう……んくっ、ん…」
顎を取られたままだから、ほとんど下半身だけをくねらせている状態だ。
想像するだけですげえかっこ悪い。

再びシャッターが切られ、また怒られるかもとそっと兵長を仰ぎ見れば予想通りいらだちを滲ませた顔にかち合った。
必死に腰の動きを止めようと歯を食いしばっていると、添えられた親指で唇を一撫でされる。
そのまま歯列を割り裂き、舌をぐいぐい押し下げてきて驚く。
あの潔癖症の兵長が自分から人の口の中に指を入れるなんて、どんな心境の変化だよ。
「むぐ…っ、へ、い…?」
遠慮のない動きに、俺の舌も自然と押し返そうとやっきになる。
少しの攻防のあと人差し指も加わり2本の指で口内をかき回されて、苦しさに何度かえづいた。
無理やり開口され時折舌を引っ張り出され、飲み込めない唾液が顎を伝う。
その様子をぱちりぱちりとカメラにおさめられていく。
上下の穴を同時に責められ、べとべとになった口許を拭うこともできず、閉じきれない唇からは情けない声が漏れ出るばかりだった。

どのくらいそうしていただろうか。
くちゅりと湿った音を立てて尻穴から舌が抜かれ、代わりに指が3本に増やされた。
「んあっぁあ……っ」
ひきつれるような軽い痛みと圧迫感を伴って、ゆっくりゆっくり奥を拓かれていく。
力を抜こうとするけれど、口に突き入れられた指のせいでうまく息もつけない。
そんな俺を察したのか、団長が俺の陰茎をするりと撫でた。
「はう、ぅ…」
萎えきっているとばかり思っていたそれはしっかり勃ち上がり、どろどろに濡れていたらしい。
先端を擦られるたび、くちゅくちゅと卑猥な音が立つ。
意識が逸れて苦しさは紛れるが、ケツを舐められて興奮していると示したようなものだ。
情けなさにまた涙が滲むのを必死に押しとどめていると、背後からどこかからかうような声がよこされた。
「リヴァイ。指と言わずそれを舐めてもらったらどうだ?」
その言葉の意味を理解して視線を送ると、服の上からでも見てとれるほど兵長の股間が膨らんでいるのに気づいた。
兵長が俺で勃つんだと考えて、いたたまれず視線を逸らす。

「別に必要ない」
固い声と共に指が引き抜かれる。
唾液が糸を引き、べたべたになったその手は取り出したハンカチで拭われたようだった。
俺もようやく解放された口元を袖で拭って息を整える。
「まだほぐしきるには時間がかかるし、きっといい絵が撮れる」
「ポーズ変えるなりすればいいだろう。俺にかまうな」
重ねての団長の言葉に、兵長は忌々しいとばかりに返す。

「大丈夫です、俺できます。兵長がお嫌でなければ」
多忙な2人に手を煩わせているのも忍びなく、何より俺の頭上での諍いごとはごめんだった。
割り入るように言葉を返せば、背後で団長が小さく笑うのが聞こえた。
「だそうだよ」
「……好きにしろ。ただしやりてえならてめえで取り出せ」

別に俺だって好き好んでするわけじゃない。
物言いに一瞬カチンときたが、一呼吸おいて手を伸ばした。
片手でどうにかベルトを外して陰茎を取り出し、ぼろりと目の前に突き出たものにぎょっとする。
半勃ちのそれは俺のよりずっと立派で大人の色形をしていて、ひどく恐ろしく感じた。
それでも、当初想定していた行為であるだけまだましだ。
少しの逡巡のあと、思い切って口に含む。
たとえようのない感触が舌や唇に伝わってえづきそうになるのを押しとどめて、歯を立てないように根元を目指す。
「そこで止まれ。…そのまま目を開けて俺を見上げろ」
限界まで飲み込んだところで指示が入り、おずおずと視線を上げた。
一枚写真を撮られたあと、カメラが下ろされる。

「…あとはてめえの好きなようにやれ」
俺は咥えたまま軽く頷き、溢れた唾液を塗りつけるように舌を絡めた。
やり方なんてちゃんとはわからない。
話を受けてから俺なりに調べたそのわずかな知識と、自分が触れられて気持ち良かった場所の記憶を総動員して奉仕していく。

再開された後ろの動きに何度か体を震わせ、時折奥まで含みすぎてえづきそうになりながら、兵長のものを必死にしゃぶる。
指の時みたいに突き入れたりはされず、兵長のそれは決してうまいとは言えないだろう俺の動きに合わせて口の中で育っていった。
その様子を頭上からと、いつの間にカメラが移動したのか背後から、何枚かフィルムに収められていく。
「…クソみてえに下手だな」
髪をくしゃりと撫でつけられ、耳の後ろからうなじのあたりをくすぐられて、その箇所からぞわぞわとしたものが走る。
散々な評価なのになぜだか褒められているような気がしてそっと視線を上げると、冷ややかだったシルバーグレイがわずかに色づき、切れ長の目元がいっそう細められていた。
俺を見つめるその目がゆっくりと瞬きするのにも目が離せない。
兵長の瞳の色を覗き込むようにして、張り出したカリ首をぬるりと舐めた。

ふいに軽く腰を押し出され思わず身をこわばらせると、頭上で息をつめる気配がして陰茎が抜き取られた。
「…エレン。もういい、十分だ」
「え、でもこれ…」
俺の下手くそな口淫だけではイけそうにないのかもしれないが、同じ男としてこの状態の辛さはわかる。
「写真は十分に撮れた。これ以上は必要ない」
そう言って仕舞おうとするのをまじまじと見やる。
「てめえな…精液飲まされたり顔にかけられてもいいってのか」
「かまいません」
咥えた時から覚悟の上だと伝えると、とたんに渋い顔になる。
「始終泣きそうなツラして何言ってやがる」
「そ、そんな顔してません!」
実のところ身に覚えがないわけではなかったが、つっぱねて返せば兵長の眉間のしわがさらに深くなった。
このクソガキと独りごち、俺の背後へと視線を向ける。

「おいエルヴィン、今何本だ」
3本という答えを聞くと、頃合いだなと呟いた。
「…かまわねえよな」
それは俺に向けての言葉ではなかったらしく、視線は団長に向けられたままだった。
肩越しに振り返ると、呆気にとられていた団長はすぐにいつもの表情に戻り、ああと短く返した。
何のことかわからずポカンとしていると目の前をカメラが横切った。
後ろの指も引き抜かれ、団長がベッドを下りる。
代わりに兵長が俺の背後に回ってようやく状況を理解した。

「へっ、兵長正気ですか?!ケツですよ…?」
撮影自体反対しているようだったし、なにより潔癖症だし、てっきり兵長はカメラ要員だとばかり。
いったい今日はどうしたって言うんだ。
「ああそうだな」
若干苛立ち交じりの返答がよこされ、穴のほぐれ具合を確かめるように両の親指で拡げられた。
「…てめえがどこまでもバカだからだろ」
その様子から性急にことを進められそうで青くなる。

「リヴァイ。あまり酷くしてやるなよ」
団長の忠告に対する返事はない。
怖くて後ろは振り向けなかった。
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