カレイドイヴ
□衝突と告白
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五十嵐
「えっ、隊長に任命がかかったんですか。」
さすがです、というように月島を尊敬のまなざしで見上げる五十嵐君。
彼にとって、月島は目標となるべき人なのだろう。
江波「おっ、月島、指令は聞いているか。
今回は頼んだぞ。
海城、お前もだ。」
同様に私にも声がかかる。
でも、私は月島さんが今回のこの件にかかわることについて反対の意見しかもっていなかった。
江波「どうした。海城」
何も、答えないずに下を向いていた私に全員の視線が向く。
海里「その指令を出したのはどこですか。」
ゆっくりと紡ぎだされた言葉は、いつにもまして冷たく若干怒気をはらんでいることは自分でもわかった。
江波「あぁ。今回は特例で国防大臣直接の指令だそうだ。」
やはり、思った通りだった。
父は一体何を考えているのだろうか。
そう、考えると怒りがふつふつと湧いてくる。
海里「私、今回のこの指令、取り下げるように上に言ってくる。」
普段、温厚で、なかなか喜怒哀楽が出ない私の様子にみんなは驚いているようだった。
そなまま、執務室を出ようとする私をだれかの手がつかんだ。
月島「これは、命令だ。我々が従う義務がある。」
なんて、月島さんはいつも通りの言葉を私に投げかける、
いつもだったら、その言葉を自信の糧にできるのに、今回だけは私の怒りを増長するだけの言葉にしかならなかった。
海里「何、言ってるんですか。
そもそも、今回の案件は本来、SEEDに任さるべき事案なんですよ。
なのに、こちらに回す義理がどこにあるっていうのよ。
それに、隊長、あんた今回の件も今までと同様に考えているんじゃないわよね!
確かに、今までは普通の人間相手だから対処できたけど、今回は違うの。
私みたいな、化け物を扱うのよ。
普通の人間が立ち会える相手じゃないの。
だから、隊長がいても足手まといなのよ。」
パン
と小気味良い音が部屋に響き渡る。
同時に頬を叩かれたのだと感じる。左頬がジンジンと熱くなってくる。
月島「君が私をどう思っても構わない。
だが、私はずっと、このSADFを守り続けてきた。足手まといというという言葉は撤回しろ。」
みんなが月島さんを見る。
今まで、月島さんが誰かに手を挙げたことなんてない、おそらく初めてなんじゃないのか・・・。
私はいたたまれなくなって急いで、部屋から抜け出した。
翼SIDE
私は一瞬何が起きたのかまったく理解できなかった。
海里ちゃんがあんな風に感情むき出しであんなにしゃべっているところを見たのは初めてだし、
何より、自分には厳しいけど他人には優しい月島さんが手を挙げたことに驚いた。