私を酔わせて

□一抹の勇気
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『私、毛利さん達とこんな風に話せているだけでも本当に奇跡なんですけど……
男性は、本当に苦手で……彼には感謝しているのにあんな態度を……』

俯いて後悔の念を漏らす私を

毛利さん達は優しく宥めてくれた

「ほんっとうに苦手なのね〜
私なら安室さんみたいなイケメンに助けられたら絶対に恋に落ちちゃう!」

「園子には京極さんがいるでしょ!」

鈴木さんの明るい口調は沈んでいた

私の気持ちを少し上向きにしてくれる

「僕も私服でアヤメちゃんと出会ってたら、萎縮されてたかもなー」

僕、女の子にはあまり見られないし!

と八重歯を見せて笑う世良さんに

どう返していいのか分からずに

曖昧な笑みを浮かべる

「あ、そうだ!サンドイッチ!」

早く食べないと冷めちゃうよ、と

毛利さんがサンドイッチを差し出す

素直に受け取ると一口頬張る

『……美味しいっ!』

瞬間広がった風味に思わず声をあげる

堪らず二口、三口と食べすすめていると

三人から強烈な視線が飛んでいた

「……早乙女さんって意外と顔に出るタイプなのね」

鈴木さんの言葉に首を傾げると

世良さんもそれに続ける

「美味しくてたまんない!って顔してるよ、アヤメちゃん」

『ええっ!?』

「しかも、食べ方は上品なのにスピードは結構早いし……
本当に幸せそうな顔してますよ!」

『……やめてください……なんか恥ずかしいです……』

毛利さんに追い打ちをかけられ

無意識のうちにサンドイッチを持ったまま項垂れる

それに気づいて慌てて皿にサンドイッチを

戻そうとして思いとどまり、それを口に運ぶ

1回手に触れたものを戻してはいけない

その奇妙な1連の動きを見ていた3人は

堪えきれず笑い始める

3人が笑うので私もつられて笑ってしまう

私にとって今までではありえない光景だ

楽しい、そう単純に思えるのは

いつぶりなのだろうか……
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