黒子のバスケ

□その瞳に映すものは
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─古橋さんって綺麗な瞳してますよね

彼女と出会ったのは図書室

本棚の前で細い腕を目一杯伸ばしても

彼女より一回りも二回りも高い

段の本棚には届きそうもない

見かねて目当てであろう本を抜き取った

誤解しないで欲しい

花宮と同じように普段の生活では

人助けをしたりもする

ほんの気まぐれ程度に、だが

急に目の前に差し出された本を見て

目の前に立つ彼女は驚いていた

貴「あ、あの……これ…」

古「すまない、間違っていたか?」

貴「い、いえ!ありがとうございます!」

本を両腕で抱きかかえ戸惑いが表情から消え

晴れやかな笑顔をみせる

いつもの俺だったら、ここで

立ち去っていただろう

古「……ところでそれは」

貴「この本ですか?私の好きな作家さんの、翻訳小説なんです!本当は原文のまま読めればいいのですが…」

本の表紙をそっと指で撫でる

聞くと原作は英文らしい

自力で翻訳も出来なくもないが

長編のため、中々骨が折れる作業のようだ

古「……やってみれば、いいのではないだろうか」

告げるときょとんとした顔をされた

古「結局、ひと括りに英文といっても翻訳者の意訳の部分も多々でてくるのだろう 君自身の解釈で読み進めてみるのも面白いのではないだろうか」

しばらく手にした本に目を落とし、

彼女は黙りこんでいた

顔を伏せているため表情は見えない

沈黙に耐えかねて口を開いたその時

貴「そうですよね!頑張って翻訳、やってみます!」

その勢いの良さに思わず気圧された

そして本棚に本を戻し、代わりに

原作の本を手渡してやる

貴「色々ありがとうございます!えっと…」

古「古橋だ 2年の、古橋康次郎」

貴「あ、はい!1年C組の御影です!…あ、次は移動教室でした!
では私はこれで失礼します、古橋さん!」

ありがとうございました!と

再度頭を下げられる

これが俺と御影との出会いだった
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