REBORN!

□冬限定の赤い糸
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その人はいつも学ランだった

例え今日のように最低気温を更新した

真冬の朝でも、学ランの上に

上着を着ているところを見たことがない

それが彼の美学だというのなら

仕方がないのかもしれないけれど

むしろ見ているこっちが寒い

こごえ死にそうなくらいに、寒い

ていうか、小刻みに体震えてません?

天然さんなの?ただの馬鹿なの?

なんて、普通の人は思っても言えないだろう

私は躊躇なく言っちゃうけど。

『……ねぇ、寒くないの?』

「……寒いよ?冬は寒いものでしょ」

……やっぱり寒かったらしい

そりゃそうだ。吐いた息はもれなく

白く染まっていくくらいの気温

冬将軍がほら貝を吹きまくっている

その冬将軍に学ラン一つで立ち向かって

いる彼は何なんだろうか……

私はため息一つつくと首に巻いた

赤いマフラーに手をかけ、解いた

そしてそれを彼の首にふわりとかけてやる

「……何?」

『貸したげる。見てるこっちが凍え死にそう
嫌でしょ?愛すべき並中で1人の女学生が凍え死んでいたら』

キュッと正面に結び目を作ると

ひらりと手を振って校門へ向かう

『じゃ、返すのいつでもいいから』

涼しくなった首元に、解放された髪

ほのかに香るシャンプーの匂いに

これと同じ匂いがマフラーにも

残っているのだろうかと思う

さっさと校内に入ってしまった私は知らない

何故か私には何かと甘い彼が

マフラーに顔を埋めて穏やかな顔で

「……相変わらず、変な子」

と微笑みながら呟いていたことも

そして校内でも1日中そのマフラーを

外さずにそのまま過ごしていたことも
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