名探偵コナン

□夜空へ舞うシンデレラ
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シケた仕事の帰り道、ハングライダーで

ネオンでやたら明るい街を飛ぶ

結局、あの宝石も探し求めていたものでは無かった

加えて、ゆるゆるの警備

あんなので俺を捕まえようなんて舐めてんのか

あのクソ成金の収集品も悪趣味だったし

本当に今日は最悪の夜だ

そう思いながら街を見下ろすと

気になる人影が見えた

廃ビルの屋上の手すりを白いワンピースの女が

まるで子供が白線の上を歩くように

軽やかに両手を広げて進んでいるのだ

一瞬心霊現象だと思った

それでも時折風に煽られて歩みを止め

バランスをとってから再び歩き始める

その姿はどう見ても本物だった

慌てて向かいのビルに降り立つ

「おい、何やってんだ!あぶねーぞ!」

声をかけるとピタリと動きが止まった

しかしこちらを向くことなく歩き始める

おい、と再度声をかけようとしたその時

突如吹いた強い風が、彼女の体を大きく傾けた

(……まじかよ!?)

咄嗟にビルから飛びだす、一瞬遅れて

彼女の体は空に放り出された

急降下で体にGがかかる

地面スレスレでなんとか彼女を抱きとめ

その勢いのまま上昇する

「あっっぶねー!まじ落ちるとこだった!」

彼女は意識を失っているらしく、

大人しく横抱きにされている

所謂お姫様抱っこというやつだ

勘弁してくれよ、と言いたいところだが

ダランと力なく垂れた手足は白くしなやかで

スタイルもいいし、顔も悪くない

いや、けっこう可愛い。正直タイプだ

むしろラッキーじゃねーか、これ

この娘、これからどうしよう

とりあえずあの場所でいいか

思いがけなく2人での逃飛行になったが

意外と満更でもない大怪盗であった
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