私を酔わせて

□5cmの恋文
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再び昨日のあのカフェの前

正直この通りにはいい思い出はないけど

その後に起きた出来事は鮮明に覚えてる

ていうか、忘れられるわけがない

あの時はあまり顔を見ていなかったけど

レジ前で初めてしっかりと顔を見た

(かっこ……よかったな……)

あの人に助けられたんだって思うと

思わずまた顔が熱くなる

変な客だって、思われないだろうか

いや、これはただのお礼の気持ちだ

大丈夫。昨日だって話せたんだから

息をゆっくり吐くと、ドアに手をかける

「いらっしゃいませ」

『あの……昨日、ここで働いている方に、助けていただいたのですが……』

「昨日?もしかして、安室さん?」

昨日はみなかった女性の定員さんが

応対してくれる

“安室さん”……確か毛利さんがそう呼んでいた

『はい、たぶん、その方だと思います』

「ごめんなさいねぇ……安室さん、今日はお休みで……
明日ならシフト入ってるんだけど……」

申し訳なさそうに眉を下げる定員さん

『いえ、大丈夫です
あの、これ安室さんに渡してくれませんか?
私、明日は用事があって……』

「いいですよ、これを渡しておけばいいんですよね?」

『はい、ありがとうございます!
あの、これ……良かったら食べませんか?』

「あら、美味しそう
いいんですか、こんなに」

『預かっていただくお礼だと思ってください……
正直にいうと、作りすぎてしまって……』

「では、マスターとありがたくいただきますね
ありがとうございます
そういえば安室さん……」

『どうかしたんですか?』

定員さんから告げられた事実に

私は慌てて財布の中を確認するのだった
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