鳥籠の闇、竜の鍵

□ようこそ、試験会場
1ページ/7ページ


「んーと…まずはどこに向かえばいいんだ?」

家を出発した私は、例のトランプを手に道を歩いていた。


というのも、審査委員から届いた試験会場案内の通知には大まかな場所しか書いていなかったのだ。

まぁ、これもハンター試験の一環ってことなんだろうな…


…それにしても……


確かに、このトランプには試験会場の住所が書いてある。


ザバン市のツバシ町という所に行けばいい、っていうのは分かるんだけど……


その下に、丁寧に“ナビゲーターが必要”と書いてある。

……会場教えてくれる意味ないじゃん……。


「…幸い試験開始まではまだまだ余裕あるし…うん。頑張ろう」

そうして私は、とりあえずザバン市に向けて出発した。









船と列車を使って数日。

私は、試験会場のある場所から少し離れた町に来ていた。

たくさんの人や店…
何もかもが新鮮で、さっきから胸がワクワクしっぱなしだ。


「でも、ナビゲーターってどうやって会えばいいんだろ……」

このままザバン市に行っても、恐らく門前払いされる。

多分ナビゲーターにしか入れないような仕掛けがあるか…
あるいは、途中関門みたいのがあるんだろう。


…とはいえ…どうしたものか。

もしかして、この審査委員から届いた封筒にヒントがあるとか?


私が封筒と中身の文書を読みながら首を捻っていると…
ふと、ある声が耳に入った。


「誰かっ、誰か助けて下さい!」


なんだなんだ?

気になった私は人混みの中から声の主を探す。

そこには、1人の女性が泣きながら通行人に声をかけている姿があった。


「お願いします、助けて下さい…!お礼ならしますから!!」

「あん?知るかよ!俺は忙しいんだ、他を当たれ!」


あ、あの男の人が持ってる封筒…

私が持っているのと同じ封筒だ。

てことは、あの人も試験を受けるのか…


それにしても、あれだけ頼んでいるのにあの態度は何なの!?

少しくらい聞いてあげたっていいのに…!


そしてやっぱり、男の人は泣いている女性の手を振り払って行ってしまった。


………よし、こうなったら。


「あの、大丈夫ですか?何か私に出来る事は……」

私が声をかけると…女性は私の手元を見て、掴みかかってくる勢いで話し始めた。

「この封筒!ハンター試験を受けるのですね、それならばさぞ腕の立つ事でしょう…!!」


………この人……


「お願いします、娘を……娘を助けて下さい!!」









女性の話によると、町外れの山の麓にあるアジトに娘が誘拐されてしまったらしい。


自分の力だけじゃ何もできないから、ああして腕の立ちそうな人を探していたんだそうだ。

夫はもういない。女手ひとつで子供を育ててきたから頼れる人もいないんだ、って。


「誘拐犯……ね」

大丈夫、私だってやることはやってきた。

そうそう遅れはとらないはず!


さあ、扉の前に立って…

この扉をバーンと…開けて……

登場………



ーーコンコン。

「あのー…どなたかいらっしゃいませんかー…?」


…部屋に入る前にはまずノックって教わったもん。

乱暴はよくないよね、うん。

平和的に解決できるならそれはそれで……


「何だテメー…ここがどこだか知って来てんのか?」


…喧嘩っ早そうな男性が出てきました。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ