鳥籠の闇、竜の鍵

□噂の彼と、塔の中
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何もない、誰もいない塔の屋上。

私たちが降りたのは、そんな場所だった。


「ここはトリックタワーと呼ばれる塔のてっぺんです。ここが三次試験のスタート地点になります」

ビーンズさんが、みんなの前に立って説明を始めた。


「さて、試験内容ですが…試験官の伝言です。…“生きて下まで降りてくること。制限時間は72時間”」

下まで…って、ここには塔の入り口もないのに…?

「それではスタート!頑張って下さいね」

疑問符を浮かべる私たちを取り残し、飛行船は悠々と飛び立って行ったのだった。



…降りる…って言っても…

ここには塔の入り口がないどころか、道具や装置も何もない。

私は、塔の縁から下を覗いてみた。


「………高い…」

ここから普通に落ちればまず間違いなく死ぬ。

いざとなれば私は降りれるとは思うけど…

ここにいるのは私だけじゃない。ということは多分、ちゃんと降りれる仕組みがあるはず。


…現に、壁の僅かな凹凸を利用して降りようとしたロッククライマーは奇妙な怪鳥に狙い撃ちにされていた。

となると…床に何か仕掛けがあるとか…?

他に心当たりもないし…足で地面を突ついて探りながら進んでみることにした。









ウロウロと動き回っていると、遠くにキルアやゴンの姿を見つけた。

…良かった。キルア、今まで通りみんなと喋ってる。

昨日はビックリしたけど…キルアの中でも葛藤はあるんだろう。

それでも、今こうしてみんなと笑えてて良かったと思う。

やっぱり…こうしてる時のキルアは楽しそうだもん。


「……あ」

彼らに気を取られている間に、足に違和感が。

探り始めてからしばらくして、ようやく床に違和感を発見した。

ある1枚の石板。

足で押してみると少し沈む…どうやら1回転する仕組みのようだ。


…ここに入るんだよね…

トラップだったらどうしよう。

それに、この入り口自体がトラップじゃなくても中に入れば何かしら試練はあるんだろう。


…まぁ、ここにいても何も変わらないか!

私は覚悟を決めて、細長い石板の端に乗った。


ーーガゴンッ


音を立てて、床が回転する。

「わっわっ」

足場を失くした私は塔の中へと落下していく。

少しの間の浮遊感…


…しかし、身体が地面に激突することはなかった。

どうやら誰かが受け止めてくれたみたい。

「す、スミマセン!ありがとうござっ……」

…嫌な予感。



「おやおや♣︎マナじゃないか♥︎」

「………」


…………な……なんで…

よりによって…このタイミングでこの人が……っ

「…ヒ…、ヒソカさん……」


またですか。

なんでここしばらくこの人にばっかり会うんだろうか。


どれだけ私はツイてないんだ…!
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