鳥籠の闇、竜の鍵

□ぼちぼち、交流
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………ん……

あれ…?何してたんだっけ私…

あ、そうだ…トリックタワーの1階に到着したんだった…


それで寝ちゃったんだよね。

もう他に誰か到着したかな…?

あの4人がいるといいなぁ……


ほんの少し期待を込めて、私は目を開いた。



「おはようマナ♥︎」

「カタカタカタ………」


…ある意味予想を裏切らないよね本当に。

「ヒソカさん、ギタラクルさん……おはようございます…」


私が寝てる間にギタラクルさんがゴールしてたのか…

けど、2人の他にはまだ誰もいない。

タイマーの残り時間は52時間。

思ったより寝ちゃったな……


「すいませんヒソカさん、私ばっかり…」

「いいんだよ♣︎それより、マナも混ざるかい?♥︎」

…私もさっきから気になってた。

2人で向き合って何をしているのか…ギタラクルさんの背中越しに覗いてみる。


「ババ抜き、してたんですか?」

彼らの手にはヒソカさんのトランプ。

ちなみにジョーカーはギタラクルさんが持っている。


「そうだよ♦︎キミもやるかい?」

トランプをひらひらさせながら私を見るヒソカさん。

うっ…また嫌なものを思い出してしまった…

軽くトラウマなんだよね。あのトランプ。


「す…すみません、私は遠慮しておきます……」

だってあれで殺されかけたんだよ?
ていうか、そうでなくともヒソカさんはあのトランプを武器にして戦ってるわけで…

…しばらくはトランプ遊びなんてできない気がする……。


「んー、残念♠︎じゃあまたの機会にね♣︎」

彼はそう言って、ギタラクルさんとのババ抜きを再開させた。

…うわぁ、なんかシュール……



結局私は2人から少しだけ離れた壁際に座って待つことにした。

ついでに、家から持ってきた小さめの鞄の中の荷物を整理する。


「……あ」

地図に挟まっていた物を手に取って、私はヒソカさんに声をかけた。

「あの、これ無いとババ抜きできませんよね…?」

手には、試験会場の場所が書いてあるあのトランプ。


ヒソカさんに見えるように持ち上げると、彼は「あぁ」と声を上げた。

「いいよ、それはキミにあげる♥︎」

「えっ?でもそれ1枚足りないんじゃ…」

「いや?揃ってるよ♦︎」

「えっ」


ま…まさかこの1枚だけのために買ったの?
……って、これ買ってるの?

それとも使い分けてるの?戦闘用と遊び用とか?
いやいや、それはそれでどうなのよ……


「くっくっく♣︎」

頭の中で考察していると、ヒソカさんが喉の奥で笑ったのが聞こえた。

考えていたことがバレたみたいで恥ずかしいやら悔しいやら。

こうなったら今度こっそり調べてみようかな…
聞いても教えてくれなそうだし。


「じ、じゃあ…とりあえず私が持ってます」

いや実際欲しいわけではないんだけど…

まぁひとまずはしょうがない。

私は観念して、再びトランプを地図の中に挟み鞄の中に入れて整理を再開させた。

まぁ整理するとはいってもそんなに荷物持ってきてないんだけどね…。



…そして私は、ふと目に入ったお守りを手に取った。

縦2cmほどのカプセルの中に小さい薄紅色の竜の鱗が入っている。

この鱗は綺麗な薄紅色だけど、私が竜になった時の鱗の色は青みがかった鮮やかな緑色。

竜によって鱗の色も違うんだな、
これが全身を包んでいるのを見たらもっと綺麗なんだろうな、
なんて1人で感動していた。


それにしても…フローリアのお守り、かぁ…

お父さん、どうしてるかな。

お母さんは変わりないだろうか。


お守りを眺めて想いを馳せていた私が、視線を目の前に向けると…

「……へ!?」

ヒソカさんとギタラクルさん…何故か2人ともこちらを見ていたのだ。


「びっ…びっくりした!どうしたんですか…!?」

思わずお守りを鞄の中に戻す。

実際、こんな小さな鱗じゃ使い道も価値もないし…
竜の鱗だと知らない限り、ただの魚や爬虫類の鱗と見分けのつかないようなものなんだけど…。


いや、それ以前に…この2人には絶対見えてなかったよね?

さっきまでババ抜きやってたじゃん!
ギタラクルさんなんて後ろ向きだったじゃん!

私も大っぴらに出したわけじゃないし…!


「カタカタ……ねぇ、それ…」

や、やっぱりお守りのこと言ってる…っぽいね…


「はい……?」

「オマエが今持ってたもの。見せて」

ギタラクルさんの言葉に、私は少し躊躇いながらもお守りを再び取り出す。

変に隠しても逆効果だろうしね。


「はい。…ちゃんと返して下さいね?」

…もしかして、ギタラクルさんも竜について知ってる…?

ヒソカさんは狙ってはいないって言っていたけど…知ってはいたし。

彼と関わってるっぽいギタラクルさんも、警戒はしておくべきだろうか。


「カタカタカタ……これ、何?」

……?
鱗のことは知らない…のかな?

「お守りです。父から貰ったもので…」

とりあえずぼかして答えておく。


「……カタカタ、カタカタ…」

「……♠︎」

「………??」

お守りを見つめたまま動かないギタラクルさん。

どうしたんだろう?


不思議に思った私が彼に声をかけようとした…次の瞬間。

ーーバチィッ!!

「ひゃっ!!?」

「…っ!」

「わぁお♥︎」

お守りから火花のような電流のようなものが発生し、ギタラクルさんの指を弾いた。


「何、今の…!?」

「……ちっ…」

「ギタラクルさん!?大丈夫ですか…っていうか何をしたんですか!?」

埃でも落とすかのように手を払うギタラクルさん。きっと大丈夫なんだろう。


それよりも、今何が起きたのか…それが知りたい。

もしかしてギタラクルさんが何かしたのだろうか。

私が持っていたって何もなかったのに…!


「…カタカタ……」

何も答えてくれない。

お守りを持つにも…これ私が触って平気なの?

ギタラクルさんとお守りを交互に見ていると…その間に入ってくる1つの影。


「ふっふっふ…イイねぇコレ♥︎ホラ、もう触っても平気だよ♣︎」

ヒソカさんだ。

迷いなくお守りを拾い上げ、それを私に差し出した。


「え…あ、ありがとうございます…でもどうしてギタラクルさんは…?」

「“ギタラクルさん”……ねェ♠︎…キミ、いつまでそうしてるつもりだい?♦︎」

「は…??」

「…カタカタ…カタカタカタ」


私が訝しげな目でヒソカさんを見たのと、ヒソカさんが楽しそうにニヤリと笑ってギタラクルさんを見たのは…ほぼ同時だった。
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