短編集・H×H

□相合傘
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「……うーん…」


困った。

完全にしてやられた。


「今日の予報は曇りのはずだったんだけどなぁ…」


…私、ナマエ…帰宅中に雨に降られました。

しかも土砂降りです。

ちょっと家を出ただけなのに…なんて悪いタイミングだろう。


…確かにね、天気予報のお姉さんも晴れだとは言ってなかったけどさ。

でも“曇り”だよ?
傘とかいちいち持ってくの面倒じゃん、たとえ折りたたみでも。


…予報はしょせん予報だって?

知らないそんなの。

こっちはその予報を信じて行動しただけだもん。


……うーん、こりゃ当分は降り止まなそう。

近くに傘が売ってるような店もなさそうだし…ケータイは家だし…

濡れて帰るしかないかなー……


「あ、やっと見つけた」

「え」

不意に聞こえた声に振り向く。


「イルミ…!?」

そこには、家にいるはずのイルミが立っていた。

自分が差している黒いものと、手に掛けてあるピンクのもの…2つの傘を持って。


「ナマエのコトだから傘なんて持ってってないだろうと思って。思った通りだったね」

しかもケータイすら置いてくなんてね、と彼。

「あ、はは……ごめんね、手間取らせちゃって」

「別にいいよ。慣れてるし」

うっ…ど、どうせ私は不用心ですよっ。


「……ありがと、イルミ」

「ん」

それでも、こうしてわざわざ届けに来てくれたり…

なんだかんだで優しいんだから。


「でもこの傘はなくて平気」

私は差し出されたピンクの傘をイルミに押し返す。


「…何?意地でも張ってるの?せっかく持ってきてやったのに」

「違うよ」

「じゃあ何?あ、色?色がダメなの?でもこれナマエがいつも使ってるやつだよ?」

「違うってば」

私はくすりと笑いながら、イルミに肩を寄せた。


…黒い傘の中に、2人。

「これでいい。っていうか、これがいい」

満足げにイルミの顔を見上げると、彼は大きな瞳を丸くして…


やがて、嬉しそうに目を細めた。

「やけに積極的だね、ナマエ」

「あら、いつもこんな感じじゃあなかった?」


…だってね、嬉しかったから。

私のこと迎えに来てくれたことが。

少しくらい私から甘えたって、いいじゃない?


「…じゃ、帰ろうか」

「うん」


…まぁ、たまには雨も…悪くないかもね。



***

イルミと相合傘。

妻にはとことん甘いゾル家長男もいいと思うのです。


…それにしても、イルミがピンクの傘を持って街を歩く光景ってちょっと微笑ましい←


…閲覧ありがとうございました(*^^*)

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