短編集・H×H

□この気持ちを
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「ボクさ、ナマエのコト好きなんだよね♥︎」


「…は?」

…最初は、コイツが何を言っているのか理解できなかった。


あのヒソカが“好き”だって?

そんなの、またお得意の嘘に決まってる。


しかもよりによってアイツ?

ナマエ=ミョウジ…

オレが仕事の関係で紹介した情報屋。

それなりに使えるし、情報屋としての腕は裏社会でも認められているというのは確かだ。

でも、これじゃまるでオレが仲介人みたいじゃないか…


「…イキナリ何?」

「いや、自分でも面白いなって思うんだけどさ♠︎」

まさか人を好きになるなんて思ってもみなかったし、とヒソカが笑いながら言う。


…その笑い方も、そういう話を聞いた後だからか何となくいつもより穏やかに見えて。

ムカつく。

そんな感情が何によるものなのか…それが分からない事にもモヤモヤする。


「だから、それをオレに話して何がしたいのって聞いてるんだけど」

実際そんなつもりはなかったけど、思わず口調が刺々しくなるのが分かった。


「ていうか、イルミは何でそんなに機嫌悪いんだい?♦︎」

聞き返されても何も答えない。

代わりに、さっさと話せとばかりに横目で睨み付ける。


「…ハイハイ♠︎そもそもあんまり意味はなかったんだけどねェ♣︎」

ヒソカは大袈裟に呆れたようなジェスチャーをしてから話し始めた。


「まぁ、強いて言うなら…一応キミの紹介だったしね♦︎一言断っておこうかと思って♥︎」

「別にオレは関係ないだろ」

そう。関係ない。


…なのに…何?この感じ。

イライラするというか、胸に何かが引っかかっているというか…

少し…息苦しい感じ、とでも言おうか?

何かの念能力…って訳ではなさそうだし。


「ふぅん…ならイイんだけど♦︎」

ならイイって、何がダメなの?

オレとナマエはただのビジネスパートナー。

大体オレの許可なんて必要ないじゃないか。

2人が何しようが、オレが口出しする権利はない……


…そう考えると、無性に悔しくなった。

どうして?



そんなの、簡単だ。


オレは気付かないフリをしているだけ。

殺し屋である自分には必要のない感情だから…

いや、それ以上に…傷付くのが怖いから。


オレは…

オレは、ナマエのことが好きなんだ。


ヒソカが言ってから気付くなんて…皮肉だな。

今となっては、何もかも遅いような気さえした。


「そうそう、ナマエって本当に面白くてさ♥︎この前なんか…」

そんなオレの心情を知ってか知らずか、ヒソカは珍しく嬉々としてナマエについて語り始める。


…聞きたくない。

けど、本当に嬉しそうに話すものだから口を挟むこともできない。

ヒソカも…そんな顔できるんだ。

珍しくはしゃいでいるようなコイツを見て…珍しく、泣きたくなった。


「…だから、今度デートにでも誘おうかと思って♣︎」

「ふーん、そう…ま、頑張って」

自分でも驚くほど抑揚のない声が出た。

いや、元々抑揚のある話し方なんてしてないと自分でも思うけど…

それ以上に、感情のこもっていない口先だけの言葉だった。


「……仕事に支障を出すようなマネはするなよ」

「分かってるよ♠︎」

「…そう」


こんな時なんて言えば良いんだろう。

オレだって、人を好きになったことなんてない。

…けどオレは、ヒソカみたいに簡単に「好き」なんて言えない。


殺し屋だから、ってだけじゃないんだと思う。

…オレも、もっと素直になれれば…少しは楽だったんだろうか。

少しは何か変わったんだろうか。


「そろそろ待ち合わせ場所に着くよ♦︎」

それを合図に、オレとヒソカはナマエについての話題を止める。

…今日は情報を受け取るために、ナマエと待ち合わせしているから。


「…おや♠︎」

そこには既にナマエが立っていた。

5分前。流石に時間にルーズでは情報屋としての信頼も落ちるからか。


「あ、ヒソカにイルミ」

オレたちを認識すると、ナマエはニコリと微笑む。

それさえも、今のオレの胸を締め付けるには十分だというのに。


「待ったかい?♣︎」

「ううん、さっき来たばっかり」

…何だ、この待ち合わせしたカップルのテンプレのような台詞は。


楽しそうに会話する2人を横から他人事のように眺める。

ヒソカの言葉に、ナマエが笑って。


お似合いなんじゃないの。

心の中で、自嘲気味に呟いた。


…この気持ちを、オレはいつまで閉じ込めていられるのだろうか。


「ねぇ、聞いてた?イルミ」

「……え?」

聞き返すと、ナマエは困ったように笑う。


「もう…でも珍しいね、イルミがぼーっとしてるなんて。大丈夫?熱でもある?」

「オレは風邪引かないよ」


優しく、しないで。


「そう、なら良かった…あのね、この近くに美味しいコーヒー出してくれる喫茶店があるの。情報渡すのにも丁度良い場所だからそこ行こうって」

そんな笑顔を向けないで。

じゃないと、オレは……


「じゃあ行こうか。そんなに遠くないからね」

「キミの紹介してくれる店はいつも美味しいから楽しみだなァ♥︎」

「ふふ、それは良かった。行こう、イルミっ」


「…あぁ」


ナマエのこと…

壊してでも、手に入れたくなってしまうから。


***

三角関係?的なネタです。

書きたいこと書いたらちょっとイルミがヘタレになった感←

そして肝心の主人公が少ししか出てこない…すみません…(笑

ではでは、閲覧ありがとうございました^ ^*

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