鳥籠の闇、竜の鍵

□いよいよ、一次試験
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それからは、私は彼らと一緒に走り続けていた。


他の人たちとはまた一味違う雰囲気というか…

まぁ、単純に一緒にいると楽しいからなんだけど。


でも、階段に差し掛かってからは…そんな悠長なことも言ってられなかった。


「うっ……わ…!」

階段を走るなんて、慣れてないからかなり怖いしもちろん疲れる。

その上体力も消耗してるし…

これはかなりまずい。



「ち…ちょっと、生身じゃ、キツイッ……!」

あー、なるべくこれは使わずに行きたかったんだけどなー…


自分自身の身体を鍛えるためにも…

それ以上に、あまり周りを驚かせたくなかったっていうのもあるけど。


…背に腹は代えられない、か。


足の疲労が限界に達した私は、周りの邪魔にならないように道の端で足を止める。


「?ねぇ!何で靴脱いでるの?」

靴を脱ぐため立ち止まった私に振り返るゴン。


「なんでぇ、へばっちまったかぁ!?」

「大丈夫か、マナ!」

レオリオとクラピカも、自分だってなかなか疲れてるだろうに…

それでも心配してくれるって、やっぱり優しい人たちだな。


「私は大丈夫…!よい、しょっ」

「なら何してるんだよっ、置いてっちま……うおっ!?」

何か言おうとしたキルアに、一気に追いついた。


「うーん…やっぱりこっちのが早いし楽…だよね」

私の足には、靴の代わりに鱗と鉤爪が現れた。

…でも、異形はどうしても周りの目を引くし敬遠される。


マントで見えにくいとはいえ、これだけ近くにいればゴンたちには確実に分かるはず。

この人たちがいくら優しくても…
口では言わずとも内心はそうもいかないだろうし。


「隠す気はなかったんだけど…はは…ごめんね、そういうわけだから私は少し前に行ってるね」

「マナが前に行くならオレも行く!」


「……へ?」

ゴ、ゴン…?

「大体、何で謝るのさ!凄いじゃん!オレ、もっとマナのこと知りたいっ!」

「…え…ええ??」

「ね?聞かせてよっ」


…てっきり、避けられると思ってたんだけど……?


「え…っと……」

「ゴン、おめーはデリカシーってもんが無さすぎなんだよッ」

「…あ、ゴメン…」

レオリオの言葉にしゅんとするゴンを見て、慌てて訂正する。


「あっ違うの!ただ少し、拍子抜けしたというか……」

私の言葉に、クスリと笑うクラピカ。

「ゴンはああいうヤツなんだよ。悪気はないし、ただ純粋にマナを知ろうとしただけだ…許してやってくれ」

「へへ…ごめんねマナ。感動しちゃって思わず…」


え…うそ、そんな簡単に?

そんな簡単に受け入れてくれるの…?

「ううん……ううん、大丈夫。逆に嬉しいくらい…!」

甘んじて、いいんだろうか。

化け物だって、思わないのかな。


「私にも、良かったらいつか話を聞かせてくれ。私も話しておきたいことがあるしな」

「何かあったら、いつでも相談に乗るぜ〜!?」

「マナもアンタみたいなヘッポコにする相談なんてねーってよ」

「なぁんだとこのガキィィ!!」

「騒ぐな!体力の消耗以前にうるさいのだよ!」


「………ふふっ」

少なくとも、彼らにそんな心配は無用みたいだ。


「本当にありがとう」

みんなに向けて、笑顔でお礼を言った。



…目頭が熱くなるのを感じた。
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