短編集・H×H

□毒に絆されて
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ゾルディックの自家用ヘリに乗って数時間、目的地に到着した私とイル。

会場の洋館はとても立派で、そこに出入りするのもいかにもお金持ちって雰囲気の人ばかり。

ゾルディック家に来る前だったら見ただけで気が引けちゃってたかも…。



早速、建物の中に入ってターゲットを探す。

「そういえば、こうやって腕を組んで歩くのも久しぶりだね」

「そうね…今度予定が空いたら一緒にどこか出かけよっか」

そんな他愛ない会話をしながら。


存外、ターゲットはすぐに見つかってくれた。

腕に煌びやかなバングルをはめた女性と2人で話しながらワインを飲んでいるあの男だ。


「奴が1人になったらオレが追うから、ナマエは廊下で待ってて」

「ならあのワインに下剤でも入れようか?それくらいなら髪一本程度で足りると思うよ」


そういえば言っていなかったけれど、私の念能力は身体の一部を引き換えにして発動する。

下剤くらいなら髪の毛一本で足りるけど、臭いだけで即死するような強力な毒薬だったら指一本とか、腕一本とか…
勿論やったことなんてないけど。

それにプラスして込めた念の量と質で毒や薬の品質が決まるわけだ。


「別にいいよ、勿体無いし」

「勿体無いって……」

よく分からない節約精神に首を傾げながら、何もしないのはそろそろまずいからとダンスを始める。


イルの腕が腰に回されて、促されるままに私は彼の肩に手を置く。

「じゃ、いくよ」

「う、うん」

色々な意味で緊張しながらステップを踏み始める。

勿論、あの男の動きにもさりげなく気を配りながら。


…うーん、ターゲットが動いて欲しくないなってちょっと思ってしまった……





「じゃ、行ってくるよ。ナマエはここで待ってて、すぐ終わらせてくるから」

そう言ってイルが男の後を追ったのがついさっき。

結局男はさっき一緒にいた女を連れて早々に会場を出て部屋に向かってしまった。

…何というか…第三者ハニートラップ?


女のほうはなるべく殺さない方針でとは言ってたけどどうなるんだろう。

イルのことだから心配ないと思うけど、怪我とかしないだろうか。

…なんて、そんなことをグルグルと考えながら廊下の椅子に座っていた。


「………?」

その時、誰かが近づいてくる気配を感じて顔を上げる。

目線の先からは、額に包帯を巻いたスーツ姿の男が歩いてきていた。


こんな人っ気のない所に1人で来るなんてどうしたんだろう。

それに、この廊下の先にはイル達が向かった部屋がある。

「ん?こんな所に人がいたのか」

「どうも。ちょっと疲れちゃって…」

この会話で時間稼ぎができるといいけど…。


「なるほど。ところでパートナーの男性は?見当たらないけど」

「外せない用事があるみたいで…今は1人です」

「へぇ、こんな綺麗な女性を1人置いていくなんて信じられないや」

「ふふっお上手ですね」

何だか人懐っこそうな人だ。これなら大分時間をとれるかも。


「そういえば貴方のパートナーもいないようですけど……」

「あぁ、こっちも同じようなもんだよ。お陰で放ったらかしさ」

彼の言葉にクスッと笑う。

怪しまれては…いないと思う。


一つ二つ言葉を交わすと、彼は私の横に腰掛けた。

こっちとしたら願ってもないことだ。


「ねぇキミ…念能力者だよね?」

「……!?」

突然の質問に思わず身構える。

それに気付いたのか、彼は「別に他意はないんだ」と私を宥めた。


「いや、やっぱり上手く隠してても良いオーラはすぐ分かるものだな。少し話が聞きたいだけさ」

「話を……?」
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