Episode

□第一章
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定められた運命の歯車は音を立てて回り続ける。

その定めを全うするのだ。

サクラの記憶の羽を取り戻すための旅は幾度となく続いていた。

ミスティークホールズと呼ばれた街は自然が豊かなのに、立派な建物が聳え都会であった。

「では俺たちは街の散策に行ってきます」

小狼はサクラを連れてミスティークホールズの街へと出向いた。

これもサクラの為である。

彼女の羽を取り戻す手掛かりを一刻も早く見つけたかった。

「この街はなんだか素敵だな」

目を輝かせてミスティークホールズの魅力に惹かれているサクラに小狼は微笑む。

彼女の可愛らしい笑顔をいつまでも見つめていたくなる。

すると

「おや、観光ですか?」

背後から声を掛けられ2人は振り返るとシルクハットに整った正装姿の中年男性が微笑んでこちらを見つめていた。

「ええ。ここは素敵な街ですね」

正直なサクラの言葉に男は嬉しそうに頷いた。

「申し遅れました。私はここの市長をしております、コールと申します」

一礼するコールにサクラも小狼も合わせてお辞儀する。

「最近はここに訪ねる観光客はだいぶ減ってしまいましてね。あなた方が久方の訪ね人です」

「そうなんですか?とても素敵な街なのに」

コールの言葉にサクラは残念そうな表情を浮かべるとコールは笑った。

「そう言ってもらえ誇りに思えますな。どうです?これから政界の者どもが集まるパーティがあるのですが、あなた方もぜひ参加していただきたい」

「え、俺達がですか?」

小狼は驚き尋ねるとコールは生やしてある髭に触れる。

「これも何かの縁です。もっとこの街の良さを知る我々にとってもいい機会となるでしょう」

サクラは嬉しそうに小狼を見ると小狼は微笑んだ。

「では、お言葉に甘えて」






そんな中、一件の大きな家で黒鋼は寛いでいた。しかし

「嫌な気がしてきたぜ」

黒鋼は寒気がしたかのように腕を組むと、それを見ていたファイは笑った。

「ひょっとしてビビってるんですかー?」

「うるせぇ!ビビってねぇよ」

ファイの言葉に黒鋼は眉を顰める。

「こういう街に来ると思いだしちまうんだよ」

「何をですか?」

首を傾げるファイの肩にモコナが乗ると知った口で話す。

「エレナのことでしょ?」

するとファイは目を閉じて笑い「ああ」と思いついたように頷いた。

「んなんじゃねぇよ」

明らかに怪訝そうな顔で黒鋼はつぶやいた。

「あの女とは関わりたくねぇ。命が何個あっても足りねぇだろうしな」






その頃、小狼たちは市長の家に招かれ家に上がる。

「わぁ!」

ヨーロッパの中世の屋敷のような家に大きなキラキラと光るクリスタルのシャンデリア。

そしてゆったりとした豪華な音楽に心が躍る。中庭にはすでにセレブと言える人々が集まっていた。

「では、楽しんでください」

コールはそう告げると政界の方々に挨拶に回った。

「私たち本当に来て良かったのかな?」とサクラは困ったように尋ねると小狼は頬をかいた。

「早速ですし楽しみましょう。何かお飲み物を持ってきます」

小狼はそう言って遠くの方に見えるウェイターの元へと向かった。

「すみません。2つください」

ウェイターに声をかけ、グラスを受け取り振り返った瞬間だった。

「!」

目の前にサクラの顔があり小狼は驚き体をビクつかせた。

「はい、どうぞ」

小狼は微笑みグラスをサクラに渡すとサクラは大人びた笑みを浮かべグラスを受け取った。

そんな彼女に違和感があった小狼は目を細め見つめると、サクラは何かを魅了するような眼差しを向けたまま背を向けた。


(小狼君…、遅いな)

政界の人々で溢れかえるそこでポツリと取り残されたサクラは気まずく、隣の部屋へ移動した。

無人の部屋に心を落ち着かせると、目の前にある鏡に気がついた。

無意識に自分の姿を見つめる。すると

「そこの貴女」

急に声を掛けられサクラは驚く。

「ごめんなさい!勝手に入っちゃって…」

振り返りそう言いかけた瞬間、目の前の人物に目を丸くさせた。

(私…?)

自分そっくりの人物が目の前に立ち、何かを企んだ表情を浮かべ笑っている。

よく分からなかったが、サクラは身の危険を感じた。

「初めて会うわね。私はエレナ」

そう名乗る少女はかぶっていたウィッグを取ると長いダークブラウンの髪が姿を現す。

「!」

サクラはその場から逃げようとしたが、ドン!っと壁に背中を打ちつけられ一瞬怯んだ。

カァっと開かれるエレナの口を見ると鋭く尖った犬歯が見え、彼女の目元は血管が浮き上がっている。

「!」

するとバン!と扉が開かれエレナは扉を見て仕方がないっといった表情で牙を閉まった。

扉を開けてこちらを睨む小狼を見てエレナは小悪魔のように笑った。

「ナイス」

強引にサクラを投げ飛ばすと小狼は彼女の体を受け止めた。そして小狼はエレナを睨みつける。

「彼女に何をした!?」

殺気立つ小狼の目を見てエレナは肩を竦めた。

「別に、ただ挨拶をしただけ。ねぇ?」

エレナはサクラにそう尋ねるが、サクラは危険な人物を見るかのような表情を浮かべていた。

「そうは見えなかった」

冷静に話してはいるが小狼は明らかに怒っている模様。

そんな彼にエレナは親指を噛みながら見つめた。

「黒鋼達に宜しく伝えといて」

そう告げた瞬間、エレナの姿は消えていた。
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