Episode
□第三章
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あれからちょうど1年が経った。
一行の過酷な旅も後半になっていた。
しかし、羽はまだ全部集まっていはいない。
子狼たちは自然豊かな国へと向かっていた。
霧が立ち込めるそこは少しヒンヤリとしており、寒気がする。
「霧を見ると思う出しちまうな」
ふと黒鋼が呟くとモコナは頭にハテナを浮かべた。
「何を?」
「きっとエレナの事だよ」
微笑みながら答えるファイにモコナは思い出したかのように頷いた。
「そういえばずっと見てない気がするな」
「何かあったのかも」
子狼の言葉に黒鋼は笑った。
「そりゃ自業自得だな」
そう話していると目の前に黒い影が現れる。
「ロビン君!」
思いもよらない人物にサクラは驚いた。
「……ッ」
そう声を掛けるもロビンは地面に膝を付いて息を荒げていた。
子狼はロビンの元へと駆け様子を伺うと顔は傷だらけで血が溢れていた。
「何があったんです?」
尋ねてみてもロビンは何も答えずそのまま意識を失った。
「ロビン君に一体何が…?」
サクラの問いに誰も答えられなかった。
「とりあえず彼を安全な場所に連れて行こうか」
ファイはロビンの体を抱き上げた。
:
「ん…」
ロビンが目を覚ますと温かい部屋に驚いた。
「ここは…」
辺りを見渡すと見覚えのある人物ばかりで心からホッとした。
「はい、どうぞ」
ソファーで横になるロビンにサクラは温かい紅茶を差し出した。
「…ありがとう」
久々に聞いたロビンの声は声変わりを終えていた。
しかし、それよりも顔立ちの整ったロビンだったが、右目には青痣が出来ており痛々しさを感じる。
「一体何があったの?」
サクラの問いにロビンは気まずそうに紅茶を啜った。
「あまり自慢できる事じゃ…ないから」
そう答えるロビンにサクラは頷いた。
「お前の姉貴はどこに行ったんだ?」
すると黒鋼はそんなロビンに尋ねるとロビンは肩を竦めた。
「さぁ?いつもの事じゃないかな」
「ってことは今は別行動してるってこと?」
ファイの問いにロビンは頷いた。
「気紛れだからな」
そう答えロビンは黒鋼を見つめた。
「エレナを捕まえに来たのか?」
「いいや、俺達の行くところにお前らが居るんだ」と黒鋼が答えるとロビンは笑った。
「それより、何があったの?」
サクラはロビンの顔を覗き込んで尋ねるとロビンは目を伏せた。そして笑みを浮かべる。
「しばらく金を盗んで暮らしてる」
あんなに可愛かったロビンの面影は今は無かった。ロビンの言葉にサクラは言葉を失い真っ直ぐに彼を見つめることは出来なかった。
「エレナにやらされたのか?」
黒鋼の問いにロビンは首を横に振る。
「そうじゃない。もうひと月、会ってないんだ」
「……」
黒鋼とファイは見つめ合い頷いた。