Episode
□第四章
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それから宿のソファーに横になりながら物思いに耽っていた。
すると隣に黒鋼が腰を下ろす。
「何故あそこから出られたんだ?」
「そんな事興味ないくせに」
「拗ねるなよ」
ムスっとするエレナに黒鋼は嫌味な笑みを向けた。
「吸血鬼の古株があんたのお姫様を狙ってるって知ったらどうする?」
するとエレナは目を細めて尋ねると黒鋼の表情が変わる。
「サクラの羽を狙ってるんじゃねぇのか?」
「さぁ?それは分からない」
「てめぇ…」
そして黒鋼はエレナの首根っこを掴みあげたがエレナは笑みを浮かべたままだった。
「こうして密着するのは何年ぶりかしら」
唆すように呟くエレナに黒鋼は呆れたようにため息を漏らしエレナから離れた。
「!」
そしてエレナの顔がみるみると青ざめていく。木の杭がエレナの背中を貫いており黒鋼がしっかりと杭を握り締めていた。
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冷たい地下牢に鎖に繋がられたエレナの姿と彼女を冷たい眼差しで見つめる黒鋼の姿があった。
「こんな所…あったなんて」
「思わなかっただろ」
「何で…」
黒鋼を睨みつけながらエレナは声を掛けると黒鋼は不敵に笑みを浮かべる。
「お前は侮れない女だからな」
「それって褒め言葉?」
口角を上げ笑みを浮かべるエレナに黒鋼は無表情になりバーベナの花をエレナの頬に触れさせる。
「ぁあああ!!」
火傷を負うような傷がエレナの頬に浮き出るとエレナは不服そうに目の前の男を睨んだ。
「拷問する気?」
「全て吐いて貰う」
「何を知りたいの…?」
「お前は誰から逃げてる」
「それは話したはず」
「オリジナルズだろ」
「そう…、吸血鬼の子孫ってところかな」
「何故何百年も逃げ回ってた」
冷たい黒鋼の声音にエレナは眉を動かす。
「私が逃げてる相手はアイザックって男だけ。その男がサクラを狙う古株の吸血鬼よ」
「サクラを狙う吸血鬼が何でお前を追い掛けてたんだ」
「ある物を盗んだから」
そう言いエレナは懐から透明石を取り出すと黒鋼に見せた。
「何だ…これは」
黒鋼が覗き込むように石を見つめたが、エレナは勿体ぶるようにすぐに懐へと閉まった。
「ムーンストーン。聞いたことない?」
「ないな…。何のお伽噺を聞かされるんだ?」
「アンタ、本当に呪いを知らないのね」
「呪いって?」
エレナの一語一句に首を傾げる黒鋼にエレナは次第に呆れて行った。
「吸血鬼が太陽の日に弱いのは知ってるでしょ?じゃあ狼男の弱点って何だと思う?」
「さぁな」
「満月の時だけ変異する。彼らにとってはどんな苦痛なのか想像も付かない」
笑みを浮かべるエレナに黒鋼は彼女の非情さに目を細めた。
「そのアイザックって男はその呪いを解こうとしてんのか?」
その問いにエレナは肩を竦めた。
「ねぇそれよりどうしてアンタはあの子に手を貸してるわけ?」
「今はそんな事関係ねぇだろ」
「へぇ〜言いたくない事があるのね。それって今の私と同じ」
「だが、今は立場が違う。分かってるんだろ?俺がどんな人間か」
「そうね。でも今のアンタには魅力を感じない。昔の黒鋼はどこにいっちゃったの?その魅力的な体の下の黒鋼は…」
色っぽく尋ねるエレナに黒鋼は目を瞑った。
「その呪いを解く為に何が必要なんだ?」
「言ったでしょ。サクラの羽よ」
話を戻され不機嫌な表情を浮かべるエレナは低い声で答えた。
「それだけじゃねぇんだろ」
黒鋼の言葉にエレナは笑みを浮かべた。
「賢くなったじゃない」