無気力少女は裏切りに生きる
□第七夜 鬼ノ呪い
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展開は早いものだ、シノアが与一に月鬼ノ組を呼ぶよう指示しているのが聞こえた。
「その斧を……
よこっせええええ!」
刀を思いっきり振り下ろす優一郎。
唸り声をあげながら、相手はそれを弾く。
「へへっ、すげぇな、おい……。
だが……シノアの鎌よりは弱ぇ!」
そう言って武器に手を延ばした優一郎を、シノアの鎌が制した。
「まったく、どこまで協調性がないんですか。鬼呪装備に素手で触らないでください。
触ったら鬼に侵食されて、あなたも彼と同じように鬼になっちゃいますよ?」
淡々と言うシノアからは、漫画だけでは伝わらない威圧感が感じられる。
これぞ柊家、か……。
「俺は鬼には負けねぇよ」
そんなシノアの威圧を直に受けている筈なのに、その威圧をまるで感じていないというような優一郎の態度には、正直感心する。
だが、シノアも負けず劣らず。
「負けますよ。あなたはまだ鬼には勝てない」
「あ?」
「ーーあなたは心が弱いから。
鬼は暗い欲望を喰らう。あなたの中にある復讐心を利用されます」
……暗い、欲望。
私は、鬼に、勝てるだろうか……?
……まあ、どうでもいいや。
「おっしゃ!武器を奪っ…!」
ーードサッ!
優一郎が歓喜の声をあげたのも束の間、彼は倒れてしまった。
それと同時に、相手もノックアウト。
相討ちだ。
「百夜さん!? だから言ったのに……!」
慌てて優一郎に駆け寄るシノアに続き、私もそちらへ歩み寄った。
「……優一郎君は、どうしたんですか?」
わかりきった質問を、あえてまるでわからない風に尋ねる。
口を開こうとしたシノアだが、ドタドタと騒がしい足音がして私たちは扉の方に目を向けた。
「はぁっ、はぁっ……な、何があったの!? 優君は……!?」
足音の正体は、全速力で戻ってきた与一だった。
「彼は、幻覚を見せられています」
静かに言うシノアに、与一はキョトンとした顔で聞き返す。
「幻覚……?」
シノアは小さく頷いた。
「ええ。このままでは彼、鬼に侵食されちゃいますねぇ」
「そんな!?」
「ところで、月鬼ノ組は?」
「あ、後からすぐ来るって」
「後から? はあ、こんな時に中佐は何を……」
二人の表情は、どんどん焦りに染まっていく。(と言うか、主に与一君ですね)
「だいじょーぶ。彼は起きます」
少し可哀想だったので、気休めの言葉をかけた。
嘘は吐いていないのだ、これぐらい良いだろう。
「何の根拠が……。あ」
次の瞬間、二人は目を見開いた。
「……。おろ? あれ? 俺いま何してたんだ?」
どうやら、優君がようやく起きた模様です。