無気力少女は裏切りに生きる
□第四夜 ヨハネの四騎士
1ページ/2ページ
吸血鬼の都市から厄介払いされた……いや、任務を命じられ出て来た私は、崩壊した世界の中を彷徨っていた。
と、ある物を視認して、足を止める。
「……でた」
ヨハネの四騎士。
所謂、フィールドをうろつくモンスター。
右手の剣を、ギュッと握り締める。
練習でものすっっごく手加減したフェリドやミカエラや、捕らえた人間相手に練習したことはあるが、実践はこれが初だ。
「まあ、でも……」
襲いかかってくる化け物。
冷静に、冷静に……
斬り殺す。
「うわー、第七始祖なめたらダメだな、これ。手加減しててもヨハネの四騎士なんて足元にも及ばないや」
まあ、お陰様で私は余裕だ。
と、その時だ。
遠くの方から、男の叫ぶような声が聞こえてきた。
何か言っているように聞こえるが、よくわからない。
「行ってみるか…」
身体をくるりと右方向に向け、勢いよく駆け出した。
「クッ、不味い! 撤退だ!」
はい、ビンゴです、殺されそうな軍の方々を発見致しました。
四騎士が…1、2、3、……。
これは、助けるに限る。そして渋谷へ案内させよう、そうしよう。
ヨハネの四騎士の一撃が、俺の目の前に迫っていた。
全てがスローモーションの世界に変わる。
仲間の顔が、視界の端に見えた。
彼らとの思い出が走馬灯の如く蘇ってくる。
そして、鋭い痛みが俺を襲う……
……筈だった。
突如目の前の化け物が、真っ二つに切り裂かれた。
何が起きたのか、全く理解不能だったが、その瞬間、俺は見た。
長く流れるような黒髪をなびかせた、
瞳が紅く、妖しく光る、一人の少女を。
不気味だ、と思った。
美しい、とも思った。
俺はその瞬間を、一生忘れないだろう。