無気力少女は裏切りに生きる
□第七夜 鬼ノ呪い
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今私は、開かずの間へと続く階段を降りている。
私一人だが、待って入れば他の三人も来るだろう。
ここで現状を軽く説明するが、実は先日吸血鬼を無傷で倒したことにより実力が認められ、吸血鬼殲滅部隊に入ることが決まった。
とは言っても優一郎と同じで、まだ普通科に通っている。
流石に吸血鬼を瞬殺したとは思われていないらしい。
まあ非武装で弱った吸血鬼を瞬殺したら何かあるのかと訊かれても、何も無いと思うからこのままで良いだろう。
と、ぼんやりと考えていたら永遠とも思えた階段を降りきっていた。
そのまま地下道を更に進んで行くと、さっきまでは暗くて見えなかった「立入禁止区域」の文字と、大量に貼られた呪符がはっきり見えてきた。
「……ここが……」
感想は、「普通だな」の一言だ。
肝試しにもってこいの暗い地下、という印象以外特に何も浮かばない。
鬼と言えど下位の物は所詮これか。
黒鬼はたとえ扉越しであっても、もっと威圧感あるんだろうな。
だが、そう思考を巡らせつつも、違和感を感じた。
それはーー
「あれ、黒沢さんじゃないですか」
扉に意識を向けていた私は、バッと振り返った。
そこには、シノアと優一郎、それから与一が居た。
「ああ、柊さんに優一郎君に……君は初めて会うね? まあ、どうもこんにちは。皆さんを待っていたんですよ」
危うく与一の名を呼ぶところだったが、初対面で名前を呼んでしまうなんてヘマはしない。
……したことはあるが。
因みにシノアとは、実はグレンから今後の私の扱いを訊いている時に一度会っている。
「待ってたってどうゆう意味だよ! 大体、ここは立入禁止なんだろ?」
いつも通り敵意剥き出しの優一郎君……ああ、相手するのめんどい。
「はぁ……今日は鬼を知るために来たんだよ。一応君達と同じ部隊だし。今日来ることぐらい把握してる。私が同行することに異存は無いでしょ? 柊さん」
私が言えば、シノアは美少女の武器・営業スマイルを浮かべる。
フェリド様の次に尊敬します。
「ええ、勿論。黒沢さんも一応探したんですけどね〜、まさかここに居るとは」
流石営業スマイル系ヒロイン、眼福です。
「あ、あの、この子って……」
「あ、はじめまして。私は黒沢弥影……吸血鬼退治の第二の英雄、と言えば解る? まあ、君らと同じ吸血鬼殲滅舞台だよ。君は?」
はっきりしない口調で優一郎に訊こうとする与一を視界端に捉えた私は、先に名乗った。
因みに、優一郎と同じく私は校内で英雄扱いされている。
「あ、僕は早乙女与一……は、はじめまして」
「与一君だね、よろしく」
自分で言いたくは無いが、終始無表情で愛想の無い私に、彼は少し戸惑っている模様。
ただでさえ気の弱い彼だ、仕方ない。
「自己紹介は終わりましたぁ? じゃあ、行きますよ。人喰いの鬼が居る可能性が極めて高いですから、勝手な行動は……」
「んな馬鹿丁寧な説明はいらねぇんだよ」
おや、ここで原作に戻った。
まあ、台詞丸暗記はしてないからなんとなくだけれども。
「要は鬼に負けなきゃいいんだろ? 俺には復讐のために力がいるんだよ。
鬼だろうが悪魔だろうが、力が手に入るなら何でもいい」
話しながら、優一郎は勝手に扉を開ける。
ガチャッと音がして、薄暗く広い空間が目に入った。
「あ、ちょっと…」
優一郎が部屋に入って行き、それを追うようにシノアが続く。
生で見ると、本当に身勝手な奴だ。
そこが魅力だとは思うし、漫画を面白くする要素でもあるが、間違いなく彼は戦場で最初に死ぬか、真っ先に仕事クビになるタイプ。
ここが漫画の世界で良かったね、おめでとう。
呆れた視線をこっそり向けて、人喰いの鬼に向かって走って行く様子を見守ることにした。