連れてって

□02
1ページ/1ページ

「何なんッスか、ここ」



海常の黄瀬涼太がキョロキョロと周りを見た。周りの人間は「知らねぇよ」と言いたげに俯いたり、同じように見回したりと様々な反応を見せる。

彼らがいるのは、見知らぬ体育館。と言っても、カーテンは虫が食い、窓ガラスも何枚か外されていて、隅には埃がたまっている。もう何年、何十年も使われていないのだろう。



「ここにいるのは、キセキの世代を擁する各校のレギュラー陣か」

「男ばかり……こういう時女の子がいれば側に寄り添って」

「黙ってろ森山」



冷静な状況判断をしている笠松に対して、森山は危機感というものがないらしい。空気を読まない発言をして笠松に沈められてしまった。



「これだけのメンバーが同じところで合宿なんて、凄い偶然だな」

「そうじゃねぇだろダァホ。そもそも、こんなゴールもないところで合宿もできねぇだろうが」

「さっきまで体育館で練習してたんだよなぁ。そしたら気がついたらここに」

「けど、つっちーとカントクいねーし」

「俺らんとこは姉貴とさつきがいねぇな」



それぞれの学校でいない人を確認し、改めて全員が円になって話し合う体勢になった。しかし、良い案もないのに発言することはできず、誰も何も言わない。

しかし、この沈黙は赤司が破った。



「このままじっとしていても始まらない。探索チームと待機チームに別れましょう」



赤司の言葉に、全員が頷いた。

そして、話し合いにより桐皇と陽泉が最初の探索チームとなった。



「んじゃあ、桐皇さんは上を見てきとくれ」

「せやな。桜井ー、ビビって離れたらあかんで」

「は、はい!スミマセン!」



桐皇は陽泉と別れ、まず4階へと向かった。そこはどうやら特別教室の階らしく、理科室や家庭科室などがある。



「奥から見てくか」

「奥は……理科室か。ホラー映画なら人体模型が動いたりするもんやな」

「止めろよ、若松がビビってる」

「ビッ!?ビビってねぇッスよ!」

「だっせ」

「青峰てめっオモテ出ろ!」



──ギシッ



「静かに。何か聞こえた」

「ああ」



───ギシッ……ギシッ……



「か、階段…?」

「誰か上がってくんのか?」

「……すげー嫌な予感がすんのは俺だけか?」

「偶然やな、諏佐。ワシもするわ」

「家庭科室開いてんぞ。隠れるか」



青峰が開けた家庭科室に入り、1pほどの隙間から様子を伺う。



──ギィ……ギィ……



「……おいおいマジかよ…!」

「しっ……」



ソレは本来、教室の片隅で佇み、じっとしているものではないのだろうか。木やプラスチックできた中身が、どうして息づいているのだろうか。

どうして、校内を堂々と、徘徊しているんだ。



「あ、あれ、人体模型、で、すよね…?」

「臓器がリアルに動いてやがった…」



──ガタガタッ



「ひぃっ…!」

「……ちゃう、下で聞こえた」

「し、下って、陽泉の…」

「いや、1階の音がここまで聞こえるとは思えない」

「……アイツ、降りていくで。理科室の向こうにも階段があるようや」



何にせよ、この隙に体育館へ戻りたい。
だが、3階から物音がしたと言うことは、そこにも何かがいるかもしれない。

迂闊には動けないということか。



「…………あ……?」

「どうした?青峰」

「今、姉貴の声が、」

「雅さんの声…?聞こえませんでしたけど、」

「気のせいじゃないのか?」



青峰は、導かれるように扉に手をかけた。



「アカン。迂闊に動けば訳のわからん奴に捕まるで」

「感じなかったのかよ、今吉サン。俺ははっきり感じたんだ。姉貴が、姉貴が“助けて”って言ってんだよ!」

「あっおい青峰!!」

「青峰さん!」



青峰は、家庭科室を飛び出した。



(姉貴ッ……姉貴ッ……!!)
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ